最近、注目されているのが「発達障害」の1つである「大人のADHD」という診断名だ。
ADHDとは、注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の略称。主な症状としては、「細かいことに注意がいかず、仕事や家事がずさんになる」「会議や会話、長い文章に読むことに集中し続けることが難しい」といった不注意や、「途中で相手の話を遮って話し始めてしまう」「話すことに夢中で聞くことを忘れてしまう」といった衝動性、「落ち着きがなく、じっくりしているのが苦手」「しゃべり過ぎる」といった多動性が挙げられている。
この同じADHDの症状の中にも、不注意だけの人もいれば、衝動性・多動性だけが目立つ人もいる。また、3つの症状が混合する人もいるという。
大人のADHDに詳しい日本医科大学の齊藤卓弥准教授(精神医学)は、「引きこもり状態の方の中にも、ADHDの症状は多くみられる」と指摘する。
これまでは、子どもの疾患であり、大人になると、自然に良くなると思われていた。ところが、むしろ大人になって、対人関係や職場、環境コントロールの問題などで、様々な困難が深刻化してくるのが現実だという。
「例えば、周囲から不注意で怒られてばかりいると、自分に対する自信がもてなくなる。忘れ物が多いなどと言われ続けていると、対人関係がきちんと作れなくなる。低い自己価値が根付いて、ささいなことを言われてすぐカーッとなったり、家族をつくるのにも困難を抱えたり、職場の中で仲間を信頼することができなくなったりする」(齊藤准教授)
2007年のWHOの調査によれば、大人のADHDの世界的有病率は、平均3.4%。ちなみに、2年前、齊藤准教授ら研究チームが行った日本の大人のADHDの有病率は、「少なく見積もっても1.65%」としていて、世界的平均からみても「水面下には、日本にも300万人くらい埋もれているだろう」と推計する。