情報の濁流に流されない
インテリジェンス力が必要

 ご無沙汰しております。いや、多くの方にとっては「初めまして」かもしれません。鈴木寛と申します。皆さんには親しみを込めて「すずかん」と呼んでいただいています。

 2001年に参議院議員に初当選し、教育、医療、スポーツ・文化などを中心に活動してきました。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めさせていただきましたが、13年7月の参院選で残念ながら落選してしまい、それ以来、オリンピック・パラリンピック招致活動等に携わっておりました。その年の11月には民主党を離党し、政治家としては一区切り、といったところです。

 この2月から東京大学公共政策大学院教授と慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授に同時就任しました。どうやら国立と私立とでは初めてのクロスアポイントメントだそうです。ありがたいことに民主党を離れてから、さまざまなオファーをいただいたなか、ダイヤモンド・オンラインよりコラム執筆の機会をいただきました。

 この連載のタイトルにある「インテリジェンス」とは、北岡元先生によれば「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。

 最近は元外務官僚の佐藤優さんの発信で、一般の方々の認知度も上がってきました。実際に、「ビジネスインテリジェンス」という言葉もあります。これらの共通項は、「意思決定者の重要な判断に資する高度に編集された知、及びその生成活動」といっていいでしょう。

 インテリジェンスは商業マスメディアで流通している情報とはかなり質の違うものです。つまり、商業メディアの情報発信の動機は利潤であり、ロイヤリティは資金提供者、つまりは広告スポンサー、ミッションは高視聴率にあります。

 一方のインテリジェンスの動機は、国や社会の安全保障にとって、より適切な判断に貢献すること。ロイヤリティは国家ないし社会(ビジネスインテリジェンスは企業体)にあり、ミッションは、洗練された判断材料の冷静な提供にあります。

 今の社会を漫然と生きていると、商業マスメディアから流れる、「記号消費」(ボードリアールが提起した概念で、情報(記号)を記号が示す対象に何らかの働きかけを行うために活用するのではなく、情報(記号)を見聞きしてそれで終わり、対象に係る行動や判断にはつながらない単なる情報の消費)のためだけの、意図をもった情報の濁流に流されてしまいます。こうした情報洪水のなか、自らの人生、自らが大切にしているコミュニティや社会の生き残るための的確な判断を下すには、皆さんのインテリジェンス力を高めていかなければなりません。