前回まで2回に分けて、日本の国・社会が大学への投資をどう行うべきか私の意見も交えて、現状の課題をお伝えしてきましたが、今回は、大学改革が目指している方向性を述べたいと思います。

注目したい国立大学法人法改正の意義
「専門職大学」と「指定国立大学」とは?

大学生を勉強させるために「卒業を難しくする」のは妥当か

 テレビメディアは、ほとんど報じていませんが、文部科学省は2017年の通常国会で学校教育法を、2016年の通常国会で国立大学法人法を改正しました。

 学校教育法の改正では、実践的な職業教育を行う新しいタイプの高等教育機関として「専門職大学」と「専門職短期大学」を創設することが決まりました。

 国立大学法人法の改正では、「指定国立大学」を創設し、文部科学大臣が世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学を「指定国立大学」として指定し、研究成果の活用促進のための出資対象範囲の拡大などを認めるようになりました。

 こうした認識を踏まえ、社会の潜在ニーズを先取りした大学づくりをサポートするために、文科省は、「専門職大学制度」と「指定国立大学制度」を提案しました。

 専門職大学ですが、これは、実務実践能力を身につける高等教育機関を作ろうというものです。すでに、これまでの学部学科を見直して、看護・介護など福祉系学部に改組・再編している私立大学は増えてはいますが、それ以外の分野でも、実務実践能力にこだわった教育を様々な分野で展開可能にしていこうというものです。

 例えば、ホテルやレストランなどの分野で、経営、人事管理、IT導入、海外展開、外国人対応、マーケティング、宣伝、会計などができる、数字や英語やITに強い人材が求められるようになる。そういう実務に資する分野を充実させていくというものです。これまでの専門学校が理論や教養教育を抜本的に充実して専門職大学になる道と、これまでの大学(短大)が、その全部または一部の学部学科を、より実務専門能力を目指して、実践型の教育を追加して専門職大学になるという二つの道があります。