こんにちは。鈴木寛です。

 インテリジェンスを鍛えるには、さまざまな立場の意見を知ることが大切になります。多様性が、知性をはぐくみ、新たなイノベーションを起こすカギとなるからです。

 イノベーションは勝者総取りの法則が基本です。二番では特許は取れませんし、論文も受理されません。二番ではダメな世界なのです。一番の論文と一番の特許だけが、知的財産として受理されるというのが、イノベーションという知の競争のルールです。

 私はライフワークとして、世界でも高い競争力を有する日本の理系大学の研究教育力を維持しながら、それをテコに文理融合型の人材を輩出し、同時に、多くの課題を抱えている文系教育・研究の大幅な改善をすべく、大学改革に取り組んでいます。

 しかし一方で、すべての人々が勝者総取りの競争社会で生きていけるのか、現に、目下最大の社会問題の一つが格差拡大となっています。すべての人が幸せに生きていける、みんなに「居場所と出番」のある社会の構築にも取り組んでいかねばなりません。

誰もが幸せに過ごせる居場所づくりへ
「地方か都会か」二項対立から脱却を

 誰もが競争社会に納得しているわけではないし、いったん失敗するとなかなか這い上がれないのがいまの世の中だという認識が、社会の現実として存在しています。

 ですから、競争に敗れて、いや、敗れる前でも、自らの判断で競争社会から自発的に離脱して、生きていけるという実態を作っていくことが必要です。

 加えて、様々な危機対応の際には、競争モデルは機能しません。しかも、危機の内容が多様化しています。自然災害、感染症の大流行、経済破綻、近隣諸国との諍いなど、目の前にはさまざまな危機があります。さらに、会社や家族や個人のレベルでも、メンタル・ヘルス悪化、病気、失業、貧困などの様々な危機があります。それらの危機に個人一人で立ち向かうことは不可能です。特に、失業者になると都会は極めて生きづらい場所となります。こうした様々な種類の危機に備えるためにも、改めて注目すべきは地方の存在です。