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田中均の「世界を見る眼」

歴史問題は日本の国際的地位を低下させかねない
国民の不満を未来志向へ変える知的指導者の役割

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第29回】 2014年2月19日
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海外の有識者や政府関係者の疑問
日本は国益をどう判断しているのか?

 最近訪日する外国のジャーナリストや学者、あるいは政府関係者から最も頻繁に質問を受けるのは、日中関係や日韓関係が一体どうなっていくのか、ということである。彼らの関心は次のようなことである。

 少なくともこの2~3ヵ月を見れば、安倍首相の靖国神社訪問やNHK会長並びに経営委員の発言など、日本国内の要人の言動が中国や韓国の反発を招いている。中国や韓国の反応は予期されたところであるが、米国の反発も公になっている。

 ところが、日本国内からは「このような要人の言動は受け入れられない」という声が高まっているとは感じられない。また、そもそも「日中・日韓関係は重要だから何とかしなければならぬ」という切迫感も感じられず、日中や日韓の政府間できちんとした話し合いが行われている気配も感じられない。

 一方、ワシントンやロンドンなどでは、日中両国の大使が激しい非難合戦を行っているように見受けられる。防空識別圏の一方的宣言や攻撃的な海洋活動で中国に対する批判が高まったが、日本の歴史に関連する言動の結果、残念ながら「どっちもどっちだ」といった受け止め方がされ出している。

 これは、国際社会における日本の評価が低下しているということである。日本国内では集団的自衛権の問題をはじめ、保守のアジェンダが次々と登場し、靖国神社への再度の参拝問題を含め、今後も近隣諸国との関係が悪化していくことすら考えられるが、それで良いということか。一体日本は、どのような国益判断をしているのか。

 これは日本に限ったことではなく、程度の差はあれ欧州や米国でもそうであるが、超保守的な勢力が勢いを増し、ナショナリズムが頭をもたげ、国々は内向きになっている。

 日本では、反中・反韓の雰囲気も充満している。先の東京都知事選挙では、社会、特に若者の保守傾向が顕著に表れたとされる。政党でも与党だけではなく、野党の中でも保守勢力が強くなっている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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