東大合格請負漫画『ドラゴン桜』で社会現象を巻き起こした漫画家の三田紀房さん。じつは『ドラゴン桜』当時から堀江貴文さんとは旧知の仲で、今回『ゼロ』の刊行を記念して数年ぶりの再会を果たしました。現在、株式投資学園マンガ『インベスターZ』を連載中で、『ゼロ』にも大いに感銘を受けたとおっしゃる三田さんと、堀江さんの常識破りの対談、ぜひお楽しみください!(構成:古賀史健、写真:田口沙織)
常識に隠された
「嘘」を暴く
堀江貴文(以下、堀江) 刑務所にいたとき、三田さんの過去作をたくさん読んだんですよ。
三田紀房(以下、三田) そうなんですか。過去作って、『エンゼルバンク』とか?
堀江 いやいや、もう『クロカン』とか『甲子園へ行こう!』とか、あのへんまで。
三田 へえー! それは嬉しいなあ。
堀江 だって『ドラゴン桜』や『エンゼルバンク』はもともと読んでましたし。出てきてからも『インベスターZ』や『砂の栄冠』も読みましたけど、とにかく「この人、どこまで甲子園が好きなんだろう」って(笑)。
三田 やっぱり高校野球って、描きたくなるサイクルがあるんですよね。ただ、いまどき普通に高校野球マンガをやってもおもしろくないから「おじいちゃんが1000万円持って『これを使って甲子園に行ってくれ』と頼みにくる」みたいな発明が必要なんですけど。
堀江 でも、テーマは一貫してますよね。世間で常識だと思われていることをひっくり返す、という。しかも、ただの「非常識」じゃなくって、ロジカルに常識の嘘を暴いていく。
三田 ああ、そうですね。
堀江 だから現実の高校野球に絡めて言うと、開成高校の野球部なんかがいちばん近いというか。
三田 おお! それはマニアックな指摘ですね。
堀江 高校野球って守備が弱いし、ピッチャーもエースひとりに頼り切りになっちゃって、エースが崩れるとチームもボロボロになる。だから普通は守備練習に力を入れるんだけど、開成高校はバッティング練習ばっかりやるんですよね。守備は捨てて、打撃だけに集中する。
三田 あれって、「持たざる者」ならではの逆転の発想なんです。まず、開成高校には野球用の十分なグラウンドがない。それで、中途半端に守備練習するくらいだったら、その時間をバッティングに使おうと。打撃練習ならバッティングケージの中でできますから。10点取られても11点取ればいい、という発想ですよね。
堀江 おもしろい。
三田 中途半端にしない。「やること」と「やらないこと」をはっきりさせる。
堀江 それで東東京予選でベスト16とかまでいってるんですよね。
三田 そうなんです。守備はガタガタですけど(笑)。