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バックネット広告でも差がついた、
日米プロ野球の経営構造

相沢光一 [スポーツライター]
【第78回】 2009年11月10日
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 MLBはそのNHKの電波にヴァーチャル広告という手法で広告をちゃっかり載せちゃっているわけだ。NHKはMLBの放映権料として年間約25億円を支払っている。こうした収入はMLB機構が一括管理し、各球団に分配しているが、球団はその収益の他、ばく大な広告料金も得られるわけで、日本はありがたいマーケットなのだ。

 NHKもこのヴァーチャル広告には手のほどこしようがないらしい。消す技術もないわけではないようだが、送られてきた映像を勝手に加工すれば、むしろ事実に反することになる。商業主義とは対極にある甲子園の高校野球もバックネットやフェンスの広告は外すが、スタンドの広告までは隠さず、ボールが飛んだ時には映る。それと同じで「映っちゃったものは仕方がない」ということで黙認せざるを得ないようだ。

日本での放送を考慮すると
松井のヤンキース残留は道理

 なお余談だが今、松井がヤンキースと来季の契約ができるかどうかが話題になっている。球団の判断の大前提は来季のチーム編成、松井が戦力になるかどうかだが、それ以外の要素もあるはずだ。

 松井は05年末に4年5200万ドルの契約をヤンキースと交わした。年俸にすると約12億円(現在のレートで)だ。この契約が今季で終わり、再契約するうえでこの高額の年俸がネックになっているともいわれるが、それはないはずだ。

 さきほどヴァーチャル広告の料金について述べた。ヤンキースの場合、1/2イニングで約3000万円。1回表から9回裏までの広告枠は18だから、1試合で5億4000万円の広告収入が入る。日本で3試合中継されれば松井の年俸を賄えるどころか、おつりまで出るのだ。ワールドシリーズで大活躍したことで、イチローに押され気味だった日本での評価も盛り返しつつあり、松井がいれば放送機会も増えそうだ。そうなれば大きな広告収入が期待できる。ヤンキースの経営陣はそうしたことも含めて再契約の可否を考えているはずである。

 ともあれ、こうしたヴァーチャル広告やMLB機構が一括管理し、各球団に分配する放映権料などによって、MLBの各球団は選手に高額の年俸を払っても経営できる構造になっているのだ。

 一方日本。放映権の売買契約は各球団が個別に放送局と行っている。その放送権料も野球中継の視聴率低下や大不況の影響で下がる一方だという(巨人は1試合1億円といわれたが、8000万円程度に下がっているそうだし、セ・リーグの他球団は3000~5000万円が相場とか。パ・リーグになると全国放送でも1500~2000万円、地方局の地域限定放送だと数100万円に落ちるといわれる。

 経営を支えるのは入場料収入、グッズ販売、そして広告。かといってマーケットが日本に限られているプロ野球球団はMLBのように効率の良いヴァーチャル広告を行うこともできない。日本のバックネット広告はゴテゴテして行き過ぎだと書いたが、あれも球団の必死の経営努力の表れだろう。そこまでしないと球団経営が成り立たない現実があるのだ。

 試合自体は盛り上がったが、球団の経営基盤は弱く問題は多い。それを提示した日米のポストシーズンだった。

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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