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大震災3年目の「今」を問う

震災3年を前に遺族の間で損害賠償請求の動き
時効を迎える「今年の3.11」が持つ特別な意味

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第2回】 2014年3月10日
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 あの東日本大震災から、まもなく3回目の命日を迎える。

 しかし、今年の「3年」は、遺族たちにとって、他の区切りの命日よりも、実は特別な意味がある。なぜなら、民事訴訟の時効がやって来る日でもあるからだ。

 不法行為による損害賠償請求権を3年間行使しない場合、時効によって、その権利がなくなり、相手に賠償請求ができなくなる。被災者の中には、そうした情報を知らないまま、時効を迎えてしまうケースも懸念されている。

 被災地では、すでに訴訟を起こしている遺族たちも少なくない。

 2月25日には、七十七銀行女川支店で、2階建て支店の屋上への避難を指示され、津波の犠牲になった行員12人のうち3人の遺族が「安全配慮義務を怠った」などとして銀行を提訴した1審の判決が行われているが、損害賠償の訴えが棄却されたため、即日、控訴している。

 また、石巻市の日和幼稚園では、学校の管理下で園児を亡くした4遺族が「幼稚園に安全配慮義務違反があった」として、園や園長に損害賠償を求めた裁判の一審判決で昨年9月、園側の過失が認定されている。

 他にも、山元町の常磐山元自動車学校、同町の私立ふじ幼稚園、同町の町立東保育所などで遺族が施設側を提訴し、現在、公判が進んでいる。

 一方、民事の時効の日を目前にして、これまで3年近く逡巡してきた遺族たちの中にも、その後の遺族に対する事後対応のまずさなどもあって、次々に訴訟を起こそうという動きがある。

約800人が津波で犠牲
名取市閖上では時効6ヵ月延長手続き

 震災発生当時、約4000人いた住人のうち、800人近くが亡くなった宮城県名取市閖上地区では、遺族男性ら10人余りが訴訟準備のための団体「家族のために」を結成。名取市に対して、損害賠償を求める検討を始めた。

 ただ、国家賠償法に基づく損害賠償請求権が、3年で時効を迎えることから、「家族のために」のメンバーは週末前の3月7日、市に対して内容証明郵便による催告を行って、時効を6ヵ月延長する手続きをとった。

 訴えの論点は、市の全域で鳴らなかった防災行政無線の不具合、市の避難指示などの初動対応、市の指定避難所だった閖上公民館から別の指定避難所の閖上中学校へ誘導され、その移動途中に津波に遭ったことなどになるとみられる。

 遺族男性らは「3月24日の第三者検証委員会の最終報告を見た上で、(6ヵ月以内に)訴訟を起こすかどうかを判断したい」と話している。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


大震災3年目の「今」を問う

この3月で東日本大震災から丸3年が経つ。被災地ではいまだ校庭に仮設住宅が建っているため、自分が入学した中学校の校庭で一度も運動できず卒業する生徒たちもいるというほどの長さだ。各自治体も、被災者もそれぞれ生活や考えに、時の流れに伴う変化が表れているという。日常では震災関連の記事が極端に少なくなる中で、自戒の意味を込めて被災地の「今」を追う。

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