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被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

“閖上の悲劇”の鍵を握る「鳴らない防災無線」の謎
名取市職員らの生々しいやりとりも徐々に明らかに

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第9回】 2013年11月15日
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10月31日に開かれた第2回検証委員会の様子
Photo by Masaki Ikegami

東日本大震災の津波によって、800人近い犠牲者を出した宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区。震災当時、4000人ほどが在宅していたといわれる閖上で、なぜこれほど多くの犠牲者を出したのか。

名取市は現在、第三者検証委員会をつくって検証作業を進めている。その第2回委員会は10月31日に開催され、当日の避難行動や災害対策本部、放送されなかった防災行政無線について、それぞれの検証作業報告の調査経過から、行政職員らの生々しいやりとりの一端が公表された。

災害対策本部の初動対応については、すでに市長ら約20人にヒヤリングを実施。震災11分後から津波が到達する15時59分までの1時間余りの間に計8回、防災行政無線で津波避難の呼びかけを行っていたことがわかった。

ところが、防災行政無線のメーカー側や市担当職員へのヒヤリングによると、無線は震災2分後の14時48分には故障が発生。市の職員は、防災無線が流れていないことを19時過ぎに気づいて対処したことなども明らかにされた。

地震発生から大津波襲来までの約70分
名取市役所が行った避難指示

 まず、災害対策本部の検証作業報告では、地震発生から大津波襲来までの約70分間の初動対応の実態解明や、事前準備の状況調査に重きが置かれた。

 検証委は、9月中旬から10月末にかけ、市長をはじめ、市の災害対策本部メンバーや地域防災計画、マニュアルなどの作成担当者の20人余りに1件2時間近いヒヤリングを実施。既存の調査資料や報道などと突きあわせた内容になっている。

 報告によると、名取市役所の初動対応について、地震発生4分後の14時50分過ぎ、施設管理を担当している財政課が、来庁者の庁舎外への避難誘導を指示。市庁舎5階にいた防災安全課の職員は、5階の来庁者を避難させた直後の14時54分頃、市民に放送するため、3階の防災無線室に駆け下りた。

 職員は、すぐに防災行政無線を立ち上げ、稼働状況を確かめた。モニターのNHKテレビから、大津波警報と津波情報が放送されていて、情報を入手できたものの、気象庁や県庁からのメールとファックスは受信できなかった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

東日本大震災の津波で700人以上が亡くなった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区では今、どこに町を再建するかを巡り、住民と市長・行政の間で大きな隔たりが生まれている。この連載では、閖上地区を具体例としながら、震災から2年経った今だからこそ見えてきた被災地の直面する問題を明らかにする。 

「被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま」

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