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歴女もびっくり!全米の少女がのめり込む
“歴史人形”アメリカンガールのリアリズム

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第36回】 2009年3月18日
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 バービー人形が、今年50歳を迎えるそうである。

 パーフェクトでセクシーなボディとファッショナブルな装いは、とても50歳には見えないものの、バービーの人気には確かに衰えが見えている。発売元のおもちゃ会社マテルの発表によると、2008年第4四半期のバービーの売り上げは前年度比で21%減少。1950年代から生き続けてきた人気人形もオーバーホール(精密検査)が必要になった。

 一方、そのバービーに替わってマテルを支えているのが、「アメリカン・ガール」という人形のシリーズである。 

アメリカン・ガールのレストラン
不況など、どこ吹く風か。人形と一緒にご飯を食べられるアメリカン・ガールの専用レストラン(ニューヨーク)はいつも大盛況。人形の髪をセットするビューティーサロンや、人形と一緒に撮影できるスタジオもあって、うっかり日本円にして10万円以上の買い物をしてしまう親も多いとか。Photo (c) APimages

 バービーの売り上げが落ち、経済不況でマテル社の業績にもかげりが見られる中、アメリカン・ガールは5%の売り上げ増を記録した。バービー人形ほどセクシーでもおしゃれでもないのに、このアメリカン・ガールは今、10歳前後のアメリカの少女たちの間で熱狂的な人気を保っている。その秘密は、いったいどこにあるのか。

 まずはアメリカン・ガールとはどんな人形なのかを説明しよう。

 アメリカン・ガールは現在、20以上の人形からなるシリーズである。人形は、アメリカの歴史のある時代に生きていた女の子という設定で、その時代の服を身に付け、その時代の部屋に住み、同じ時代を生きる友達もいる。その女の子が歴史の荒波にもまれる様子を語った6冊の本も一緒に売られている。

 アメリカン・ガールの持ち主の少女たちは、人形を見ながら本を読み、その女の子の時代を学ぶ。つまり、自分の好きな人形に同一化することで、アメリカの歴史に浸り、その時代の少女の生活を追体験し、そんな遊びを通して、持ち主の少女たちが知識を広げ、自己形成を図っていくというシナリオなのである。

 たとえば、オバマ大統領の娘たちも持っているという「カヤ」という名のアメリカン・ガール人形は、1764年に生きたアメリカン・インディアンの少女だ。肌も浅黒く、インディアンの服装をまとったカヤは、白人が占領する前のアイダホ州で家族と一緒に暮らし、インディアンとしての伝統を守っていた……。

 あるいは、人気の「キット・キットレッジ」は1934年の大恐慌時代にオハイオ州で生活する少女。父親が仕事を失って生活が苦しくなる中で、たくましく生き、家族が住んでいる住まいを守ろうといろいろな手を尽くす。

 その他にも、20世紀初頭のビクトリアン時代に孤児として生まれた「サマンサ」、1970年代の反戦運動とヒッピーの時代にサンフランシスコに生まれ、両親が離婚してしまう「ジュリー」など、さまざまなキャラクターが自分なりの人生を生きていくのである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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