急激な円安と
増税に晒される小売業

「制約がある時代こそ、小売り業界では何らかの新業態や躍進する業態が出てくる」

 そう語るのは長年、小売り業界を担当するメリルリンチ証券の青木英彦アナリストだ。ここで言う2つの制約とは何か。一つめは急激な円高から円安へ振れたことによる輸入物価の上昇→仕入原価の上昇、二つめは消費増税による顧客の「価値志向」が急激に高まることだ。

 為替については、2012年2月に1ドル70円代後半で推移していたが、現在は1ドル100円前後。わずか2年間で40%程度も円安に触れているのだ。

 こうなると、輸入物価の上昇圧力が高まる。前出の青木氏は「景気低迷期に、低価格志向の顧客に応えるために、小売業界はすでにコストを切り詰めて売価を下げても利益を確保できる体制をとってきた。しかし、これ以上、コストを圧縮する余裕がない。したがって、2014年にコストプッシュ型のインフレが本格化したときに、売価を上げざるを得なくなる」と語る。

 2013年春以降、アベノミクスによって景気回復基調になってきているとはいえ、消費者が価格にシビアな事に変わりはない。売価を上げざるを得ない状況におかれた小売業にとっては、低価格に代わって、どのように顧客の要望に応えていくかが喫緊の課題となる。