今回は、社内で組織的に行われるいじめについて、改めて考えたい。舞台は、スポーツ用品や器具の販売会社。正社員数は約90人だ。十数年前、経営不振のために20人ほどのリストラを行った。ここ10年は、業績は比較的安定している。

 この会社の営業部(社員は約20人)に所属する29歳の男性は、数年前から直属上司(課長)やその上の上司(副部長)からいじめを受けている。今や、それに多くの社員が加担している。この男性に手を差し伸べる者はいない。

 男性は結婚しており、3歳の子どもがいる。最近は、その子や妻に対してDV(家庭内暴力)に近い行為を行うようになったと告白する。その理由は定かではないが、職場で受けるいじめのストレスと、何らかの因果関係があるのかもしれない。

 この男性のように、周囲の大多数の社員による組織的ないじめを受けたらどうするか。読者諸氏もそんな危機感を持ちながら、一緒に考えてほしい。


「パシリ」と罵られ殴られる
いじめに次ぐいじめの会社生活

「お前はアホか?」

 石井の大きな怒号が響いたその瞬間、めまいがしたという。

 葛城(29歳・仮名)は、直属上司である石井(38歳・仮名)から頭を殴られた。「ぱーん」と音が響いた。周囲の社員たちは酔っていたはずなのに、黙り込んだ。(①)

 葛城はとっさに「痛い!」と声を出した。実際に痛かったが、声を潜めることもできた。

 筆者の取材には、「声を出さないと、自分がこの上なく惨めになる」と話す。殴られても、面と向かって抗議ができない。そんな歪んだ主従関係が、上司の石井との間にあった。