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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

いじめのストレスで妻子を虐げる“29歳の惨めなパパ”
無抵抗社員を憎しみの連鎖に追い込む学級崩壊職場

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第34回】 2014年3月18日
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 今回は、社内で組織的に行われるいじめについて、改めて考えたい。舞台は、スポーツ用品や器具の販売会社。正社員数は約90人だ。十数年前、経営不振のために20人ほどのリストラを行った。ここ10年は、業績は比較的安定している。

 この会社の営業部(社員は約20人)に所属する29歳の男性は、数年前から直属上司(課長)やその上の上司(副部長)からいじめを受けている。今や、それに多くの社員が加担している。この男性に手を差し伸べる者はいない。

 男性は結婚しており、3歳の子どもがいる。最近は、その子や妻に対してDV(家庭内暴力)に近い行為を行うようになったと告白する。その理由は定かではないが、職場で受けるいじめのストレスと、何らかの因果関係があるのかもしれない。

 この男性のように、周囲の大多数の社員による組織的ないじめを受けたらどうするか。読者諸氏もそんな危機感を持ちながら、一緒に考えてほしい。


「パシリ」と罵られ殴られる
いじめに次ぐいじめの会社生活

 「お前はアホか?」

 石井の大きな怒号が響いたその瞬間、めまいがしたという。

 葛城(29歳・仮名)は、直属上司である石井(38歳・仮名)から頭を殴られた。「ぱーん」と音が響いた。周囲の社員たちは酔っていたはずなのに、黙り込んだ。(①)

 葛城はとっさに「痛い!」と声を出した。実際に痛かったが、声を潜めることもできた。

 筆者の取材には、「声を出さないと、自分がこの上なく惨めになる」と話す。殴られても、面と向かって抗議ができない。そんな歪んだ主従関係が、上司の石井との間にあった。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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