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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

「服を脱げ!」「男たちにキスをしろ!」
新人女性をいじめ抜く“女帝社員”の病的な権力構造

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第33回】 2014年3月11日
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 今回は、社員数が15人前後の広告制作プロダクションで働いていた24歳の女性を紹介しよう。すでに退職しているが、在籍中は酒の場で先輩たちから服を脱ぐことや、男性社員にキスをすることなどを命じられていた。それを「ホステス」とか、「警察ごっこ」と社内では呼ぶのだという。

 それらの「いじめ」を周囲に指示するのは、主に30代前半の女性社員だった。あたかも「女帝」のごとく、かねてから自分よりも若く見栄えのする女性社員を、いじめ抜いていた。男性社員がこうした「いじめ」を女性社員にするのであれば、それは明らかなセクハラであり、罰せられて然るべきだ。しかし、先導しているのが同性である女性社員というから、話が複雑になるし、なおさらタチが悪い。

 今回は、なぜこのプロダクションでこれほどの異常事態が起きているのか、その構造に迫りたい。程度の差こそあれ、読者諸氏の職場でも似たようなトラブルは起きていないだろうか。「悶える職場」の課題を、一緒に考えてみてほしい。


「ホステス」に「警察ごっこ」――。
異様な雰囲気に包まれた憂鬱な忘年会

 2011年の暮れ、渋谷のカラオケ店。筆者は、JR渋谷駅からNHK放送センターに向かう道の途中の雑居ビルにいた。ある広告関係者の飲み会に呼ばれたのだ。

 「抱きしめていいですよ!」「まだ、男を知りませんから」「キスをしても、OK!」……。

 広告制作プロダクションに勤務する、15人ほどの会社員が酒を飲み、酔っ払いながら大きな声で騒ぐ。平均年齢は30代前半。その中に数人女性がいるが、一緒に大騒ぎをしている。立ち上がれないくらいの泥酔状態だ。

 15人の真ん中に、30代後半から40代後半の男性が3人いる。困惑した様子の彼らは、大手広告代理店のプロデューサー(役職は部長待遇)だ。

 その横には、24歳の女性・熊本(仮名)が、脅えた表情で座る。少し震えているように見えた。半年前に、プロダクションに新卒(大卒)として入社した。熊本は、この日「ホステス」をさせられていた。「ホステス」とは、この会社で面白くおかしく使われる言葉である。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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