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世界同時不況に多角化で立ち向かう
製造小売業革命の寵児H&Mの大進化

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第38回】 2009年4月2日
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 今から9年前の2000年春、ニューヨーク5番街にH&M(へネス・アンド・マウリッツ)のショップがオープンした際、アメリカのメディアでは「リップオフ・ブランド」という表現がたびたび使われていた。

 リップオフ(rip off)とは、直訳すれば、盗作のこと。ただ、むろんそのものずばりを意味しているわけではない。

 彼らいわく、H&Mは、パリやロンドンで行われる高級ブランドのファッションショーが終わるや否や、そこで発表されたファッションのエッセンスをうまくつかんでデザイン画を起こし、工場に届ける――。次のシーズンのファッションをどこよりも早く、しかも安く早く世に送り出すH&Mのスピード経営を「リップオフ」という言葉で形容したのだ。

 改めて紹介するまでもないかもしれないが、H&Mは、アメリカのGAP、スペインのインディテックス(ZARAブランドの製造発売元)に次ぐ、世界第3位のファッション・ブランドである。2008年度の年間売上高は1040億4100万スウェーデン・クローナ(付加価値税込み。約1兆1100億円)。超人気ブランド、ユニクロを擁するファーストリテイリングのグループ連結売上高が5864億円(2008年8月期)であることを考えると、その強大ぶりがお分かりいただけるだろう。

 H&Mの最大の特徴は、何と言っても、おしゃれなファッションを“超破格値”で販売していることだ。同社が世界共通で掲げるモットーは「最高のファッションとクオリティーをベストな価格で」というもの。その表看板に違わず、店内に溢れるレディーズ、メンズ、子供服はどれも驚くほどの手頃な値段で、それでいて安物っぽい粗(あら)が見えない。何と言ってもアイテム数が多いので、見尽くしたつもりでもまだまだ宝探しができるような気にさせる。

 H&Mは、昨年末時点で世界33カ国に1738店舗を構えている。本拠は創業地のスウェーデンだが、最大のマーケットはドイツであり、ヨーロッパ各国はもとより、アメリカにも150店以上を持つ。ニューヨーク地域だけでも41店舗を構えている。中東以外は、ほとんどが直営店だ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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