ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
辻広雅文 プリズム+one

「エンプテイ・ボーテイング」――ヘッジファンドが駆使する“空の議決権”行使戦略とは何か

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第74回】 2009年6月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 前回は、「エクイテイ・デカップリング」というヘッジ・ファンドが得意とする投資行動が、従来の株主(の議決権行使)の概念を覆し、会社法の根幹までを揺さぶっている現状を紹介した。

 簡単に要約しておこう。

 株主にはなぜ、議決権が与えられているのか。株主には、企業の残余価値を最大限高めるというインセンテイブが働く。したがって、株主総会では、企業価値を高める議案には賛成し、企業価値を低める議案には反対する。つまり、株主に議決権を与えることによって、企業価値が高まることが期待されている。それが、株主に議決権が付与されている理由であり、会社法の根幹かつ大前提の考え方である。

 ところが、株主の多様化が進み、金融技術が進歩し、証券市場が発達すると、企業価値の増大には無関心、場合によっては企業価値を毀損させる行動に出る株主が登場した。例えば、ヘッジ・ファンドが投資している会社に対して、ショート・ポジションを取っている場合は、株価が下落したほうが利益は上がる。彼らにとっては、企業価値の増大よりも、株価の変動のほうが重要なのである。

 となれば、そのヘッジ・ファンドは、その会社の価値を高める議案に対して反対の議決権を行使するかもしれない。その行為は、企業価値を高めるために株主に議決権を与える、という会社法の根幹、大前提を根こそぎ否定してしまう。
 
 言い換えれば、この行為においては、本来株主として併せ持つべき企業価値を高め経済的利益を得るべき立場と議決権を行使する立場が、完全に分離してしまっている。この現象が、「エクイテイ・デカップリッグ」である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


辻広雅文 プリズム+one

政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。

「辻広雅文 プリズム+one」

⇒バックナンバー一覧