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山田厚史の「世界かわら版」

「潜在的核保有国・日本」への不信
オバマが安倍から「核」取り上げた

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第57回】 2014年3月27日
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 ギリシャ神話の「地獄の神」プルート。その名を冠したプルトニウムは核爆弾の原料である。危険極まりないこの核物質は日米の間で「同盟の証」だった。米国は日本にプルトニウムや高濃縮ウランを与え、原子力開発に使わせていた。今になって米国は「引き渡せ」と迫る。一連の交渉に安倍政権への不信が滲む。

安倍首相が引き渡しを表明

 オランダ・ハーグで開かれた核安全保障サミットで安倍首相は、茨城県東海村で研究用に使っていたプルトニウム・高濃縮ウランを米国に引き渡すことを表明した。

 「テロリストに渡る危険性」を危ぶむ米国の要請とされるが、厳重な管理なら日本でも可能である。米国はそれを許さず、「米国へ移送」にこだわった。日本は信用できない、と言わんばかりの強い姿勢は、安倍首相が進める「戦後レジームからの脱却」と無関係でなさそうだ。原子力平和利用を口実に「潜在的核保有国」でありたいとする日本への冷めた眼差しが、親密な日米関係の象徴だった「核物質」を日本から運び出す決断となった。

 引き渡しが決まったのは東海村にある日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置にある核物質。核分裂性プルトニウム290キロと93%の高濃縮ウランが199キロ。純度が高く核爆弾に転用できる厄介者だ。いずれも研究用として米英から1960年から70年代にかけて買った。所有権は日本にあるが、米国は「警備体制が万全とはいえない」と核物質がテロリストや北朝鮮など危険国家に流出するのを恐れ、世界的な核管理の一環として日本に引き渡しを求めていた。

 日本は「基礎研究のために必要だ」と渋っていたが、今年になり米国の要請は一段と強まり、オバマ訪日に向けた外交交渉の中で日本は要請を受諾。核安保サミットで安倍首相が表明することで決着した。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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