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田岡俊次の戦略目からウロコ

迷走始めた「集団的自衛権行使容認」議論

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第26回】 2014年4月17日
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集団的自衛権行使の容認を巡る議論が迷走して来た。第1次安倍政権で検討された「4類型」と昨年10月に示された「5事例」を検討すると、個別的自衛権で対応可能なケース、憲法を変えないと無理筋のケースがあるうえ、行使内容の限定論に至っては、現在よりも後退する発言もある。とすれば、「集団的自衛権行使容認」の箱だけでもいま作ってあとで好みの中身を詰めるのが安倍政権の狙いと映る。

「安保法制懇」は公私混同の「お友達懇談会」だ

 2006年11月28日、29日にラトビアのリガで開かれたNATO首脳会議は日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがNATOの「パートナー」であるとの共同宣言を出した。欧州、北米の同盟である「北大西洋条約機構」が日本など太平洋の国々を引きこもうとしたのは唐突な印象があった。2001年10月からの米英のアフガニスタン攻撃は、ゲリラ相手に苦戦が続き、欧州諸国は増派を渋り、戦費・行政経費がかさんでいたためで、「陸上自衛隊の輸送ヘリコプターを出してもらえないか」との打診もそれ以前にあった。

 安倍首相は翌2007年1月12日、ブラッセルのNATO本部で、日本の首相として初めて演説「日本はNATOのパートナーです」「いまや日本人は国際的な平和と安定のためであれば、自衛隊が海外での活動を行うことをためらいません」「日本はアフガニスタンの未来に賭けている」などと述べた。

 安倍首相は同年4月17日、私的諮問機関として「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を設置した。のち安倍氏自身が「空疎な論議は排除した」と述べたように、13人のメンバーは集団的自衛権による武力行使を容認する人ばかりを集めた「お友達懇談会」だ。もしこれが法的根拠がある審議会のような公的機関なら、人選や討議内容について国会等で論議の対象となり得るから、一定の透明性が確保されるが、私的な懇談会なら誰を呼ぼうが、何を話そうが全くご自由だ。ところが他方でこの懇談会の事務は「内閣官房において処理する」としているから、NHK、読売新聞などは懇談会に権威を持たせるためか「政府の安保法制懇」と言い、朝日、毎日新聞などは当初の建前通り「私的諮問機関」と書いていることが示す通り、公私の別がひどくあいまいで、人治主義への傾きが顕著だ。

問題の本質は「日本防衛以外の武力行使」の是非

 憲法の解釈を変更、あるいは憲法を改定して集団的自衛権の行使を可能とすべきだ、との論の根拠は

①どの国も集団的自衛権を持つのに日本は行使できないのはおかしい
②日本は米国に守ってもらうのに、日本は米国を守らない「片務性」が米国から指摘されている
③日本周辺の戦略環境が悪化しており、同盟関係の強化が必要
④米国と中国との経済関係が拡大し、米国の日本離れが起こりつつあり、米国を引きつけておくために一層の防衛協力が必要

 の4点と思われる。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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