大きな反響を呼んだ2014年3月の『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』の連載の続編が登場! 5回までの連載はクレームに対する基本原則を中心に解説したが、第6回からは悪質度の異なる様々なクレーム事例を紹介し、具体的にどう対応すればよいか、ポイントをいくつか抜粋する。今回は善意のお客様をキレさせないために、封印すべき“D言葉”を伝授。

「ふつうのお客様」をモンスターにしない

 お客様の口調がどんなに厳しくても、そこに悪意があるとは限りません。むしろ、クレームを持ち込むお客様のほとんどはそれなりの理由があって、怒りをあらわにしています。そこで、相手をヒートアップさせないコツをお伝えしましょう。以下の事例から、あなたならどう対応するか考えてみてください。

「いったい、なにが気に食わないのか?」
 月曜日の午後3時。部内会議で吊るし上げられた片山一郎は、がっくり肩を落として自分のデスクに戻った。

 山と積まれた資料を前に、なにから手をつければいいのか思いあぐねていると、内線電話が入った。

「片山さん、ユーザーから電話が入っています。4月に発売した新商品に関するクレームです」

 片山はため息が出るのをこらえて、転送ボタンを押した。

「お待たせいたしました。私、片山が承ります」
「取扱説明書のとおりに操作しても、まったく動かない。どういうことなんだ?」
「申し訳ございません。恐れ入りますが、どのような状態なのか、教えていただけますか?」
「どうもこうもないよ。ウンともスンともいわないじゃないか!」