どんな時代でも生きていける「一生モノ」の自信をわが子につけさせるには、どうすればいいのだろう?と迷いを感じている親御さんに向けて、不定期でお送りしている開成学園校長・柳沢幸雄さんのインタビュー。5月21日から5回にわたり、開成高校硬式野球部を取材したベストセラー、『弱くても勝てます』の著者・髙橋秀実さんとの対談を隔日で掲載しています。開成学園といえば、「東大進学者数全国ナンバー1」として知られる日本トップクラスの進学校。ところが、お二人の対談を通して見えてきたのは、「開成っ子」の意外すぎる一面でした。対談最終回では、子供を伸ばす親子関係、夫婦関係をテーマに話していただきました。

中学1年になったら「子離れ」する

髙橋秀実
(たかはし・ひでみね)1961年横浜市生まれ。東京外国語大学モンゴル語学科卒業。テレビ番組制作会社を経て、ノンフィクション作家。『ご先祖様はどちら様』で第10回小林秀雄賞、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』で第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。そのほか著書に『TOKYO外国人裁判』『素晴らしきラジオ体操』『からくり民主主義』『はい、泳げません』『やせれば美人』『結論はまた来週』など。

柳沢 今は一人っ子が多いこともあり、どの親も子供に対してすごく手をかけて育てます。ただ、そのせいで、子離れや親離れができていない家庭が増えているのは問題ですね。

僕がよくお母さん方に言うのは、「子供に干渉しすぎないで欲しい」ということ。身の回りの最低限のことは自分でさせて、できるだけ手出しをしないでくださいとお願いしているんです。子供が中学生になったときにうまく母親が子離れをしないと、子供がゆがんでしまいます

髙橋 どういうことですか?

柳沢 開成では、子供自身の意志を非常に尊重しますから、中学生であっても生徒たちには「オレは大人だ」という自意識があります。でも、家に帰ると母親がいて、べったりと乳飲み子のように世話を焼く。すると、どうなるか。子供の価値観が、学校と親の間で、股裂きのような状態になって、バランスが崩れてしまうんです。ここでスムーズに移行できればしっかりとした子供に育ちやすい。