経営 × オフィス

会議に水を出せない!ホワイトボードを運べない!
エクセレントカンパニーの硬直した組織慣習

山口 博
【第1回】 2014年6月17日
1
nextpage

 「ペットボトルの水も、ホワイトボードも用意できませんね」

 わが国に20社の傘下会社を有するグローバル・エクセレントカンパニーT社で、グループ企業を統括する月岡人事統括部長は、こう言い放った。

 T社から、ミドルマネジャーのコーチングスキルなどを高めるプログラムを実施してほしいとの依頼を受け、スキル向上のロールプレイングや話法の訓練を繰り返し行う研修を実施する際の出来事だ。スキルアップのための自己成長エンジンを埋め込み、そのハンドルの仕方を体得する仕組みで、特に組織再編成前後の能力向上・組織向上プログラムとして有用だ。

水を出せない!ホワイトボードを運べない!
言い訳ばかり並べる人事統括部長

 ロールプレイングやグループ討議主体のプログラムゆえ、T社での実施準備にあたっては、参加人数分のペットボトルの水と、ホワイトボード4台の準備を能力開発課長へ依頼しておいたのだが、実施日1週間前になって、いずれも準備できないとの連絡が入った。どうしても必要ならば、能力開発課長の上司である月岡人事統括部長へ、私から直接依頼してほしいと言う。

社長室スタッフが用意してくれた水とホワイトボードを巡って、社内の葛藤が明らかに

 大したことを要求したつもりはなく、戸惑いながら月岡人事統括部長に手配をお願いすると、「用意できません」とさらりと言う。

 理由を問うと、山ほど答えが返ってきた。「前例がない」、「人事統括部長(つまり、自分のことだ)が参加する会議には水を出すが、それ以外の会議やトレーニングには水を出さない」、「演習の依頼はしたが、当社のルール内で実施してもらいたい」、「予算がない」、「水を買いに行かせる時間がない」、「水の運び手がいない」ということであった。

 ホワイトボードについても、「会場の会議室に、ホワイトボードは4台ない」、「別の会議室を予約した方に失礼なので、別の会議室からは運べない」、「別の会議室を、ホワイトボードのためだけに予約できない」、「別のフロアから持って来いといっても、エレベータに入らない」、「斜めにすればエレベータに入るとしても、人事統括部の社員に、怪我のリスクを負わせられない」……。

 黙って話を聞いていて、頭がクラクラしてきた。まだ子どものおつかいの方がマシだ。

1
nextpage

「経営×オフィス」を知る ワークスタイルで変わるオフィスとは?

  • ワークスタイルの変革とオフィスの変化
  • 創造性を育む「クリエイティブ・オフィス」の作り方
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 快適性×オフィス=社員が変わる
  • 働き方の多様化が進むほどオフィスの役割は重要になる 新しいワークスタイルとオフィスの進化

OFFICE TOPICS 働く場所・働き方・働く人

「経営×オフィス」を見る 理想のオフィスのつくり方

 

山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

「トンデモ人事部が会社を壊す」

⇒バックナンバー一覧