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山田厚史の「世界かわら版」

法人税減税に正義はない
公平な税制を歪めた成長戦略

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第63回】 2014年6月19日
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 安倍政権は、すごい政権である。憲法を変えない限り無理とされた海外での参戦を「憲法解釈」で出来るようにする。放射能汚染水の垂れ流しは「アンダーコントロール」と世界に説明した。

 それに比べれば「消費税は上げて法人税は下げる」なんて軽いかもしれない。税と社会保障の一体改革を叫びながら、減税財源を示さないまま法人税を下げるのは乱暴だ。企業への優遇税制を残し、税率だけを下げるのはフェアでない。公正な受益と負担という財政の根幹を揺さぶるものだ。

 「私がやると決めたからやるんだ」といわんばかり首相の態度は納税者を舐めていないか。

ネット上で話題となったトヨタの決算

 自民党税政調査会で法人税が議論されていた時、ネットでは「5年間納税(法人税)ゼロ」の会社が話題になっていた。トヨタ自動車である。5月8日にトヨタが発表した2014年3月期決算は、営業利益が前年より73.5%増え2兆2921億円と、史上最高の好決算となった。

 売上でなく利益が2兆円である。驚くべき決算だが、もっと驚く事実を豊田章男社長は明らかにした。

 「うれしいことは日本でも税金を納めることです」

 決算会見の冒頭でこう述べた。

 「社長になって国内で一度も税金を払っていなかった。企業は税金を払うのが使命。納税ができる会社としてスタートラインに立てたことを素直に嬉しく思う」

 トヨタはどん底の経営が続いていたのか、と思ってしまうが、そんなことはない。昨年度も1兆3208億円の営業利益を出し、一株90円の配当を行っていた。圧倒的な好決算に潤いながら税金を払っていない、とは一体どういうことなのか。

 法人税は利益に対する課税だ。1兆円を超える営業利益を稼いだなら、相当額の税金を納めてしかるべきだと思える。

 「1兆円儲けても無税」の仕組みをトヨタは明らかにしない。社長が「払えて嬉しい」というのだから、税金をごまかしていたわけではないだろう。合法的に課税を逃れた結果である。税制がトヨタのような「大儲け」に寛大な仕組みになっている、ということである。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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