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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

マクロ経済スライドだけで
年金の問題は解決できるか?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第3回】 2014年6月26日
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 現在の日本の公的年金には、「マクロ経済スライド制度」が導入されている。

 これは、2004年改正において導入された制度で、加入者が減少し受給者が増加することの影響を、年金額を減額することによって調整するものだ。

 では、これを完全に実行できれば、年金の問題はすべて解決できるのだろうか?

 以下では、マクロ経済スライドは必要だが、それだけでは公的年金の問題は解決できないことを指摘する。

マクロ経済スライドに
課されている制約条件

 2009年の財政検証においては、2012年から2038年までの26年間にマクロ経済スライドが実行されるものとされた。毎年の切り下げ率は、公的年金の被保険者の減少率(およそ0.6%)と平均余命の伸びを考慮した一定率(およそ0.3%)の合計である0.9%とされた。0.9%の切り下げを13年間行なうと、年金額は11%ほどカットされることになる。

 では、この制度だけで年金改革ができるだろうか? つぎの2つの問題が指摘される。

 第1の問題は、果たしてマクロ経済スライドを実行できるかどうかである。

 実は、制度は導入されたものの、これまで一度も実施していない。物価が下落しているときには発動できないためだ。具体的にはつぎのとおりだ。

 マクロ経済スライドには、つぎのような限定化がなされている。

 「賃金や物価の上昇率がある程度以上の値になる場合にはそのまま適用するが、適用すると年金名目額が下がってしまう場合には、調整は年金額の伸びがゼロになるまでにとどめる」

 したがって、賃金や物価が下落する場合、それに応じて年金額を下げるが、それ以上に年金額を下げることはないのである。

 例えば、つぎのとおりだ。本来はマクロ経済スライドで年金額を0.9%減少させる必要があるとしよう。一方、賃金が上昇していれば新規裁定年金は年金計算式によって増加するし、物価が上昇していれば既裁定年金は物価スライド制により増加する。いま、賃金上昇率と物価上昇率は2.5%であるとしよう。

 この場合、マクロ経済スライド制がなければ、年金は2.5%増加する。しかし、これを2.5-0.9=1.6%の増加にとどめようというのが、マクロ経済スライドである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

日本社会は、世界でも稀に見る人口高齢化に直面しており、このため、経済のさまざまな側面で深刻な長期的問題を抱えている。とりわけ深刻なのは社会保障であり、現在の制度が続けば、早晩破綻することが避けられない。この連載では、人口高齢化と日本経済が長期的に直面する問題について検討し、いかなる対策が必要であるかを示すこととしたい。

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