参院選の物価高対策で減税でも給付金でもない選択肢とは?「賃金と物価の好循環」空振りの理由Photo:SANKEI

与野党ともが“痛み止め”の政策
首相は「物価と景気の好循環」を放棄!?

 7月3日に公示された参議院議員選挙は、物価高対策が政策論争の大テーマになり、「減税か?現金給付か?」と、与野党の対立点が語られる。

「えっ、本当にそうなの?」と、この争点設定に戸惑ってしまうのは筆者だけだろうか。与野党がアピールしている政策は、物価上昇の原因に対応してそれを止めるのではなく、“痛み止め”を出そうとするものだ。

 これが医師の対応なら皆さんはどう思うだろうか。例えば歯科に行って、痛み止めのカロナールを渡されるだけならば、「治療はしてくれないのですか?」と腹を立てるはずだ。

 なぜ、物価対策は減税で対応するという話で済まされるのだろうか。

 もともと石破首相は「賃金と物価の好循環」、つまり物価上昇を上回る賃上げ実現を経済政策の基本に置いていたはずだ。だが、東京都議会選や参院選が近づくと、選挙を意識した自民党内などからの声に押されるように、現金給付へとかじを切った。

 とはいえ、現金給付にしても減税にしても当面、当座の物価上昇の痛みを和らげるだけに過ぎない。へたをするとインフレをより高めることにもなりかねない。

 家計消費の弱さはずっと言われてきたことだが、その原因は「賃金と物価の好循環」を実現してもその恩恵に浴さない人たちの問題が根底にある。

 この問題への対応策がないのでは、議論が上滑りするだけでなく、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)な消費構造は変わらないままだ。