NTTドコモが、インド市場から撤退した。

 所定の業績を達成できなかったため、NTTドコモの持分法適用会社であるインドの通信事業者「タタ・テレサービシズ」の保有株式をすべて売却するオプションを行使した(報道発表資料)。先日開催された株主総会でも、持分法適用会社関連で計上された690億円の赤字の大半が、インドへの出資の損失であることが、明らかにされている。

 2009年からスタートした、インドにおけるジョイントベンチャー「タタドコモ」の挑戦には、私も大きく期待した。ようやく日本の通信産業が、通信事業者を中心とした姿で「産業輸出」できるように感じられたのだ。しかし、NTTドコモの海外への挑戦は、「今回も」残念な結果に終わった。

 それでも、先進国での派手なM&Aではなく、新興国で経済圏を作る動きは、これからの日本の通信産業にとって、挑戦を続けなければならないテーマである。ここで諦めてしまっては、中国勢の攻勢の前に、為す術なく立ちすくむばかりだからだ。

 なぜNTTドコモは、インドで失敗したのか。その検証は、日本の通信産業を(海外展開も含めて)お手伝いする私自身にとっても重要なテーマである。

 そこで今回は、インドをはじめアジアの新興国への進出支援で、もはや第一人者といっても過言ではない、インフォブリッジホールディングスの繁田奈歩代表と、NTTドコモの失敗について、検証してみたい。

派手な広告と価格政策で
認知拡大には成功、しかし…

――NTTドコモがタタと設置した合弁企業「タタドコモ」からの撤退を発表しましたが、タタドコモのこれまでの経緯は、現地からどのように見えたのでしょうか。

繁田 NTTドコモがタタに出資して「タタドコモ」を立ち上げたのは、2009年。その後2011年に増資に応じています。最初の出資ではGSMへの投資、11年の増資時点では3G回線への投資に主眼が置かれていたかと思います。

 当初、加入者が急増したことで、インド市場でも注目を集めました。これは、特定地域での料金プランがうまくはまったからなのではと、私は考えています。