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ついに破綻した山水電気の本当の“命取り”とは?
寂寥感漂う音響機器業界に学ぶダーウィン的経営論

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第336回】 2014年7月29日
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オーディオの名門がついに破綻
山水電気の栄枯盛衰を振り返る

 山水電気という名前を聞いたことがある人は少ないかもしれない。山水電気は1944年創業の高級音響機器メーカーだ。1960年代から80年代前半までのオーディオブームの波に乗って業容を拡大し、創立から二十数年後の1970年には東証1部上場を果たすまでに上り詰めた。

 当時わが国では、トリオ、パイオニアと並ぶ“オーディオ御三家”の1つだった。特に同社の高級アンプ“SANSUI”は、オーディオマニアの間では一世を風靡したと言っても過言ではない。その山水が破綻に追い込まれた。7月上旬に、東京地裁より破産手続きの開始決定を受けていたことが、ここに来て明らかになったのだ。 全盛期の同社を知る人たちにとっては、寂寥感を感じる向きも多いだろう。

 一方、「やはり駄目だったか」という感覚を持つ人も少なくないはずだ。同社の破綻には、ある意味では“必然”を感じざるを得ないからである。経営の生き詰まりの原因をひとことで言うと、経営環境の変化に対応できなかったということだ。

 1980年代中盤以降にオーディオブームの波が去り、デジタル化の大波が押し寄せた。それに伴い、従来の音響機器は一部のマニアの間では残ったものの、多くの消費者はデジタル機器へと殺到した。

 その変化によって、オーディオ業界は冬の時期を迎えた。“オーディオ御三家”も、厳しい冬の時期に入ったのである。その時点で、新しい生き残りの道を模索することが必要だった。

 山水は他の2社と比べて対応が遅れ、しかも長期的な展望もないまま、目先の資金繰りのためにシナジー効果のはっきりしない外資の傘下に入った。それが命取りになった。

 生物の進化論を唱えたダ-ウインの言葉の中に、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである」という格言がある。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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