今回は、人材派遣大手のテンプホールディングス(以下「テンプ」)とパソナグループ(以下「パソナ」)を扱う。

 人材派遣会社では、他社との「差別化戦略」が図りにくく、勢い知名度に頼った戦略を採用することになる。その点でパソナが、今年になって女性週刊誌などを賑わせているのは、同社にとって良いことなのか悪いことなのかは判断がつきかねる。

 本コラムでは、そうした時事問題などには言及しない。有価証券報告書から窺い知れる解析結果のみを、淡々と紹介することにする。

 人材派遣会社は先ほど述べたように、他社との差別化戦略を図ることが難しいので、薄利多売のビジネスモデルであることを容易に想像することができる。それを確かめるために、次の〔図表 1〕を作成した。この図表は、中小企業庁『中小企業実態基本調査』のデータをもとに、筆者が作図したものである。

 〔図表 1〕において、赤字で示したところが、人材派遣業界の平均値を示す。

テンプとパソナの
トレードオフ関係

 〔図表 1〕は、総資本営業利益率(ROA:Return On Assets)を、二次元平面上で表わしたものだ。その総資本営業利益率を式で表わすと、次の〔図表 2〕になる。

人材派遣会社テンプの「一人勝ち」となるのか <br />パソナとともに陥る「囚人のジレンマ」

 〔図表 2〕(3)式の第1項(売上高営業利益率)が、〔図表 1〕の縦軸になる。〔図表 2〕(3)式の第2項(総資本回転率)が、〔図表 1〕の横軸になる。

 企業としては、売上高営業利益率と総資本回転率の「二兎を追って」、〔図表 2〕の総資本営業利益率ROAを上昇させることができれば申し分ない。しかし、現実はそううまくいかないから、〔図表 1〕では、灰色で描かれた「右下がりのトレードオフ曲線」が描かれることになる。