産業界でも類例がない“創業事業の切り離し”に踏み込んだ日立造船。現在は、環境エンジニアリング会社として再出発しているが、事業構造の改革では“秘策”を温めてもいる。

 事実上、すでに造船会社でなくなっている日立造船だが、社名から“造船”を取り外すまでにはもう少し時間がかかりそうである──。

 5月9日、日立造船は2016年度を最終年度とする新中期経営計画(14~16年度)を発表した。連結売上高を14年度見通しの25%増の4000億円、営業利益を同2.3倍の230億円に引き上げる計画で、グループ全体では研究・開発費やM&Aなどに1000億円を投じるという。

 同日に発表された13年度決算では、連結売上高が前年度比12.3%増の3334億円となる一方で、国内のプラント建設における技術トラブルや船舶用エンジンの採算性悪化などが響き、純利益は49.8%減の37億円となった。

 日立造船は、11年に発表した前中期経営計画(11~13年度)では16年度までに売上高5000億円を目指していたが、ほぼ全ての数値が未達に終わったこともあり、新中期経営計画では4000億円に一歩後退せざるを得なかった。

 しかも、足元の決算では、グループ全体で約60%の売上高を持つ大黒柱の「環境・プラント」部門が99億円の営業利益を上げたものの、その他の「機械」「プロセス機器」「インフラ」「精密機械」などが軒並み不振だったことが足を引っ張り、連結の純利益が半分以下にまで目減りしてしまったのだ。

 1881(明治14)年に創業した日立造船は、02年にJFEグループのユニバーサル造船(現ジャパンマリンユナイテッド)へ造船部門の移管を開始してからは、“造船なき重機メーカー”として再出発した経緯がある。国内七つの生産拠点(造船所)は、シールド掘進機や水門、海洋構造物などの工場に切り替えられていった。