厳しい公益事業規制を課した
簡易ガス事業制度
日本の大半の家庭では、厨房や給湯において、ガス(天然ガスかLPガス)を利用している。天然ガスの大半は輸入LNG(液化天然ガス)によるもので、「都市ガス」として供給される。LPガスの大半は輸入LPG(液化石油ガス)によるもので、「プロパンガス」と呼ばれることもある。
日本のガス需要世帯は、天然ガス(都市ガス)とLPガス(プロパンガス)でほぼ半数ずつ分け合う。平成24年3月末現在、都市ガスは約2890万世帯、LPガスは約2540万世帯となっている。今回の話の主役は、都市ガスではなく、LPガスだ。
LPガスの事業形態は、資料1にあるように、①個別供給(一戸建て住宅などへのLPガス容器の設置)、②小規模導管供給(集合住宅や団地への「導管供給」のうち69戸以下のもの)、③「簡易ガス事業」(集合住宅や団地への「導管供給」のうち70戸以上のもの)の3つに大別される。
なお、現行では、①と②は液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法)に規定される「液化石油ガス販売事業」、③はガス事業法に規定される「簡易ガス事業」となっている。
なぜこのように事業形態が分かれてきたのか。LPガスの歴史をかいつまんで見ておこう。
LPガスが日本の家庭消費者向けの燃料として利用され始めたのは昭和30年代で、それまで使われてきた木炭や練炭に代わって普及した。当時は容器(「ボンベ」、「シリンダー」とも呼ばれる)にLPガスを充填して各世帯に取り付ける供給方式が主流であった。
昭和40年頃から都市周辺部で住宅団地の造成が急速に増え、これらの団地にはLPガスを導管で供給する方式が多く採られるようになった。これは都市ガスほど大規模な需要家を抱えるものでなかったが、導管によりガスを供給するという点で都市ガス事業(一般ガス事業)と類似の性格を持っている。