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山田厚史の「世界かわら版」

プーチン来日 北方領土が動く

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第67回】 2014年8月28日
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 ロシアのラブロフ外相は25日、モスクワで記者会見し、秋に予定されていたプーチン大統領の日本訪問を「日本の招待を受け入れ、日本が時期も確定した」と述べ、ウクライナ情勢とは関係なく、訪日する用意があると強調した。

 「消えた話」と思っていたプーチン来日。それが蘇り、日本にタマが飛んできた。26日にはミンスクで、プーチンとウクライナのポロシェンコ大統領が握手した。ロシアは何を考えているのか。どうする安倍首相。受けるのか、見送るか。対ロ制裁の旗を振る米国への忠義立ては無視できないが、ロシアは明らかに北方領土をちらつかせている。したたかなプーチン外交。日本は改めて「外交の独自性」が問われている。

地の利は日本、問題は米国

 ウクライナへの軍事介入、クリミアの分離独立、東ウクライナで親ロシア派支援、マレーシア航空機の撃墜……。こうまで立て続けに紛争を煽れば国際社会から孤立する。プーチンは「極悪人」扱いだ。「冷戦復活」とさえ言われる。

 とはいえ米国も欧州も武力で介入するわけにもゆかず、経済制裁しか手がない。ロシアは返す刀でEUからの農産物を禁輸とした。お互いに身を痛めながらの我慢比べが続いている。

 プーチンは西方に紛争を抱えている。ウクライナを停戦に持ち込み、親ロ派の自治政府を認めさせるのはかなりの力仕事だ。当分は米国・EUと緊張が続く。つまり国際的孤立は解けない。そこで打った手が、東方との「和解」だ。ウクライナは日本にとって直接的な利害損得はない。ロシアの国際法違反を理由に、米欧と歩調を合わせているに過ぎない。

 東を戸締まりすれば、西に注力できる。中国は、欧米路線に距離を置く仲間ではあるが、シベリアに大勢の中国人が進出し、経済的な「実効支配」が心配される。その点、日本人はシベリアに領土的な野心はない。

 ウクライナやチェチェンなど西で血なまぐさい紛争に手を取られてきたプーチンにとって、北方4島は決して核心的課題ではない。歯舞・色丹の2島は、1956年の日ソ共同宣言で「返還」がうたわれたいきさつもあり、ロシアは「外交カード」として温存していた。

 プーチンの誘いは、安倍政権にとって悪い話ではない。外交孤立を避けるため日本に接近せざる得ない状況での交渉は、日本に地の利がある。問題は米国だ。北朝鮮問題と同様、日本の勝手な振る舞いにオバマ政権は神経を尖らせている。プーチンのウクライナ介入に経済制裁でしか対処できず、「弱腰」と批判されるオバマにとって、子分である日本がロシアの融和策にのって離脱するのでは、米国の求心力低下を見せつけることになる。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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