マスコミ関係者の食糧買い占めにより、弁当やパンが買えない――。この夏、広島で起きた土砂災害の際に、マスコミの行動を批判するツイートがネット上に出回った。結果的に、このツイートは悪質なデマである可能性が高いと判断されたが、「既得権益」に見えるマスコミがネット上で何かにつけて激しい批判に晒されるケースが増えている。なぜ既存メディアは、ネット時代に叩かれるのか。今回はマスコミの「常識」と「非常識」について、報道機関の代表格である新聞記者たちの声を通じて改めて考えてみたい。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

「マスコミが食糧を買い占めた!」
広島土砂災害でにわかに噴出した批判

「マスコミ関係の方の報道は必要なのかも知れませんが、広島市安佐南区八木地区の私の家の近所のコンビニ2軒はマスコミ関係者の食糧買い占めにより、私たちには弁当やパンが買えません なので毎日八木から車で渋滞に巻き込まれながら遠くのスーパーまで買い出しです(>_<)改善求む!!」

 この夏、広島で起きた土砂災害の際に、マスコミの行動を批判するこんなツイートがネット上に出回ったことはご存じだろうか。

 このツイートは瞬く間に拡散。2ちゃんねるにもツイートが貼られ、「(マスコミは)ゲスいな。心底ゲスい」などのレスがついた。

 しかし同時に、「報道関係者がそんなことをするわけがない」「本当の情報なのか」という疑問も浮上。ツイート主は疑問が寄せられるとアカウントを消し、さらに実際にコンビニに問い合わせた人から、「そのような実態はないようだ」という情報がもたらされた。結果的に、このツイートは悪質なデマである可能性が高いと判断されている。

 場合によっては、デマを拡散してまでマスコミを批判したがる。ネット上の一部では、今そういった傾向がある。「マスコミ=強」「一般人=弱」という図式から、マスコミの傲慢な行動を見かけたという一般人の書き込みは、拡散力が非常に高いのだ。

 こうしたケースを見て改めて気づかされるのが、「既得権益」に見える新聞やテレビが、ネット上で何かにつけて激しい批判に晒されるケースが、最近とみに増えていることである。