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どう中国と付き合うか 日中首脳会談は実現するのか、両国は何を話すべきなのか

現状打破には“規格外のプロジェクト”がカギ
APECを前にした最新日中関係論考【後編】
――国際コラムニスト・加藤嘉一

加藤嘉一
【第3回】 2014年9月11日
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 “日中首脳会談”は開かれるのだろうか?

 私が知る限り、現段階では決まっていない。

 「盛り上がる世論を後ろ盾に、無条件で首脳会談の開催を希求する日本側」と「開催には条件が必要だと断固主張し、世論はまったく盛り上がっていない中国側」。これが会談に向けた日中両国の構図であろう。中国側が求める「条件」とは、(1)日本の首相が靖国神社に参拝しないこと、(2)尖閣諸島に領有権問題が存在することを認めること、の2つだと私は認識している。

 「無条件」VS「有条件」の溝は深く、日中外交当局がこの溝をどう埋めていくか、そのためにどのような協議をこれから2ヵ月の間で重ねていくかが、“日中首脳会談”の開催に向けた鍵になるであろう。私自身は、この溝そのものを棚上げしてしまうようなダイナミックな交渉と知恵が日中両国には求められていると考えている。

「点」の議論で暴走している
会談を懇願する姿は適切か?

 前後編の最後に、日中関係の現状と展望に関する愚見を述べる。

 昨今の日中世論を俯瞰していると、“日中首脳会談は実現するのか?”というフレーズが独り歩きしているように感じる。実現するかしないかのみに焦点が集まり、“日中関係の発展のためには何が必要か?”という「面」の議論がなされないまま“日中首脳会談は実現するか?”という「点」の議論だけが暴走しているように見える。

 「自分からここまで赤裸々に日中首脳会談をやりたいと懇願する姿勢は、かえって日本という国を小さく見せてしまう。自らの戦略と国益に真の自信を持っている国家はそんなことを自ら口に出さない。相手に攻め込まれるだけだ。外交カードを失うだけだ。弱みを握られるだけだ。しかも、相手は中国だ。中国という国家に向き合うだけの戦略と覚悟が日本には欠けていると思う」

 ワシントンDC在住の東アジア専門家が私にこう語った。

 私自身は、日中両国は首脳会談の早期実現に向けて双方向の努力をすべきだと考える。

 「両国首脳が面と向かって話をすることは、両国が直面するクリティカルな問題をトップレベルで議論できるだけでなく、両国の市場や世論に“友好”という名のシグナルを発することにもつながる」

 北京で過ごした学部生時代、日中関係を研究する一人の先輩から私はそう教わった。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


どう中国と付き合うか 日中首脳会談は実現するのか、両国は何を話すべきなのか

今年で3回目となる日中関係を考える連載「どう中国と付き合うか」。今年は11月に中国北京でAPECが開催されることから、この機会を利用した日中首脳会談が開催されるかどうかは、早い時期から日中関係ウォッチャーの間で話題となっていた。しかし、両国の閣僚や政府筋の発言を見ていても、明確な関係修復の兆しは見られない。識者には「APECで日中首脳会談が開かれなければ、両国関係は本当にマズいことになる」という危機感が募る。果たして11月、安倍晋三首相と習近平国家主席は会談の席につくのか。席につかせるためには、両国はどのような努力をすべきなのか。日中の歴史、外交、防衛などの専門家に寄稿、インタビューから、その答えを探る。

「どう中国と付き合うか 日中首脳会談は実現するのか、両国は何を話すべきなのか」

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