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田岡俊次の戦略目からウロコ

「尖閣に安保適用」で小躍りは愚の骨頂
オバマ大統領は日中関係の改善を求めた

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第27回】 2014年5月1日
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先週開かれた日米首脳会談では、日本のメディアはオバマ大統領が「尖閣への安保の適用」と「集団的自衛権行使検討の歓迎」を表明したことばかりを報道し、与党・自民党も「満額回答」と小躍りしている。だが、共同記者会見を子細に検討すれば、オバマ大統領が安倍首相に日中関係の改善を強く求めたことが伺える。「尖閣への安保適用」で米国の後ろ盾を得たとばかり、中国との対決姿勢を強めるのは大きな間違い。これを絶好の機会ととらえ日中関係を改善し、米国との信頼関係も回復させることができれば、日本にとって本当の「満額回答」となるだろう。

オバマ大統領の尖閣支持発言は
従来からの米国の立場の表明

 4月24日、東京・元赤坂の迎賓館で行われた日米首脳会談で、オバマ米大統領は尖閣諸島に日米安保条約第5条(武力攻撃に対する共同行動)が適用されることを述べた。25日の日米共同声明にも、安全保障条約のコミットメントは「尖閣諸島を含め、日本の施政の下にある全ての領域に及ぶ。この文脈において、米国は、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動も反対する」と記された。

 大統領がこれを明言し、共同声明で文書化されたことには、中国を慎重にさせる点で価値があるが、本来あまりにも当然で、日本人が大喜びする程の事とも思えない。実は尖閣諸島の赤尾嶼、黄尾嶼は日米安保条約に基づく地位協定で、米軍の射爆撃場(標的)として、提供施設・区域となっており、米空軍横田基地などの利用権が安保条約によって保障されているのと同様、単に日本の施政権下にある領域の一部であるというだけではなく、米軍の管理下にあるのだから二重の意味で安保条約の適用対象であることは明白だ(赤尾嶼、黄尾嶼は中国風の名だから、近年「大正島」「久場島」と改称されたが、米軍への提供施設・区域としては旧名のままだ)。

 オバマ大統領は共同記者会見で「尖閣に関する、終極的な主権の決定については、特定の立場を取らないが、歴史的には日本の行政下にあり、一方的に変更されるべきとは思わない」と答えた。「米国は他国の領土問題に関与しない」との原則的な立場を保ちつつ、日本寄りの姿勢を示す微妙な言い回しだ。

 大統領は今回、新たな立場を表明したのでなく、「ヘーゲル国防長官、ケリー国務長官も訪日時に示したように、従来から一貫した米国の立場であった」と言う。「日米間の条約は私が生まれる前からあった」と述べ、自分が新たな決定をした訳ではないことを中国向けに示そうと努めた。オバマ氏は1961年生まれで、日米安保条約は1951年に調印され、1960年に改定されたからこれは正しいが、「だから私の責任ではない」と言わんばかりの弁解だ。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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