日銀の黒田東彦総裁は16日、大阪市内で講演した。今年4月の消費税率引き上げは以前から予定されていたものであり、新たな景気の下振れ要因ではないということだが、その講演内容を読み解こう。

ダントツに悪い消費支出

講演内容は、日銀のホームページに掲載されている。

 2%のインフレ目標の実現に向けた動きなど、その方向感について、筆者は異論があるわけでないが、当面の問題については、ややクビを傾げるところがある。その該当部分を抜き出せば、次の箇所である。

 (1~2ページ)
 「こうした振れを取り除くため、1~3月と4~6月を合わせてその前の半年間、すなわち昨年7~12月と比較すると、年率+1.0%の成長となります。このように、均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いています。やや詳しめにみても、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が依然としてみられているほか、輸出や生産は弱めの動きとなっていますが、雇用・所得環境の着実な改善が続き、家計のコンフィデンスは改善しています」

 (3ページ)
 「私どもも、消費税率引き上げ以前から、これを前提としたうえで経済・物価の見通しを作成しています。また、消費税率の引き上げが実質所得にマイナスの影響を与えるのは事実ですが、財政や社会保障制度の持続性に対する信認を高めることにより、家計の支出行動に対するマイナスの影響をある程度減殺する力も働くと考えられます」

 (6ページ)
 「需給ギャップについては、消費税率の引き上げに伴う駆け込みと反動の影響はありますが、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていることから、過去の長期平均並みであるゼロ%近傍まで改善してきています」

 これらに対する筆者の懸念は、消費増税の影響(3ページ)と潜在GDP(1~2と6ページ)の見方の二つに集約できる。

 まず、消費増税の影響について、総務省が8月29日発表した7月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出について、世帯人数を調整した上で変動の影響を除いた実質で前年同月に比べ5.7%減少した。4ヵ月連続のマイナスである。