世界が注目したスコットランドの住民投票は、9月18日に投開票。その結果、分離独立が否決されて英国に残留することが決まった。

 今回の「一地方の国家への帰属を住民投票で決める」試みは、大きな歴史的意義がある。ナショナリズムの抗争の新しく望ましい決着として、これから大きな影響を与え続けるだろう。

 実際、スコットランド、英国ばかりでなく、世界中にこの投票結果をめぐって、ワクワク派とヒヤヒヤ派が存在し、手に汗を握って待ち構えた。気が付いただけでも、さまざまな影響が予想できる。

他の英国地域、EU内でも
分離・独立の動きが高まる可能性も

(1)投票結果に対して、独立賛成派のスコットランド民族党のサモンド党首は、「人々の民主的決定を受け入れる」と声明を発し、キャメロン英首相は「あなた方の声は届いている」と自治権拡大をあらためて約束した。

 イングランドとスコットランドは、古来から幾度もの血で血を洗う戦争を経て、300年前に連合王国を形成した。今回の投票による決着は、そんな悲惨な歴史から学んだのであろう。今回の「スコットランド方式」は、人類の知恵としてこれから重要な世界の範例となる。

(2)英国では、ウェールズと北アイルランドがスコットランドと同じ立場に立っている。当然のことながらその独立志向を強めていくだろう。また、英政府がスコットランドにさらなる自治権の拡大を約束したので、ウェールズも北アイルランドも同等の権利を要求するのは当然のなりゆきだ。反面で英国中央政府の権限は必然的に弱まることが避けられない。

(3)地域の独立問題を抱えるヨーロッパ諸国(スペイン、イタリア、ベルギーなど)では、ワクワク派とヒヤヒヤ派が固唾をのんで推移を見守っていただろう。

 これらの国の政府が分離独立を許すかどうかはともかく、「住民投票で決める」方法に反対するのは一段と難しくなった。国によっては「憲法に規定がない」と抗弁しているがいかにも苦しくなる。

(4)スコットランドの分離独立志向の背景には、EU、NATOの大枠がある。スコットランドが英国から離れても、原野に独りで飛び出すわけではない。EU、NATOとの協調や保護を強固な城壁として当てにしている。だから、EUの統合が深化すればするほど、分離・独立を求める動きが強まるだろう。