建替え成功への
第一歩は危機意識の共有

 マンション建替えで最大の難問が、資金計画をどうするかである。古いマンションの取り壊し費用、新しいマンションの建設費用、引っ越しや仮住まいに掛かる費用、コンサルタントなど専門家を雇う費用、さらには税金や手続きの費用も影響する。これから建替えに入る管理組合は、消費税が10%になったときの税額を考える必要がある。

 100%還元は無理でも、できるだけ自己負担を減らしたい。そう考える管理組合は、さまざまな方策をとろうとする。そこに必要なのがコンサルタントなど専門家の介在だ。

「最近の都心マンションの建替えで増えているのは、隣の土地や隣のマンションと共同で建替え、効率を上げて負担を少なくするといった手法です。また、2013年11月に耐震改修促進法が改正され、14年12月にはマンション建替え円滑化法改正が施行されるなど、状況も刻々と変化してきています。賛成と反対の意見が交錯し、行き詰まったまま数年経過している管理組合も多いのですが、法的整備が進んできたことで選択肢が増え、解決の糸口が少し見え始めました」

 例えば敷地の一部を住民以外も使える公開空地に提供することで、容積率や高さ制限、斜線規制などを緩和することができる総合設計制度。こうした制度を利用すれば「どれだけ有利になるか」は、やはり専門家に入ってもらわないと分からない。

 また、合意形成においても、第三者に介在してもらい、アドバイスを受けることは重要だ。

「建替えを検討するとき、どの管理組合においても必ず『積極賛成』『判断保留』『無関心』『積極反対』という4タイプが生じます。

 賛成派には管理組合の理事経験者や建築に詳しい方が多く、建物の現状を危惧して有志を集め、建替えの検討を始めることが多い。ところがその危機感が必ずしも共有できておらず、逆に『自分が得するためにやっているのではないか』といった誤解を受けてしまうことがままあります」

 小さな誤解が激しい対立に発展しては、元も子もない。そこはやはり、建替えのプロの知見やノウハウを生かすべきだろう。