住民の希望優先、設計にも
施工にも住み手の目が光る

 建替えマンションのメリットは、あくまで住民本位の建物が建てられることにある。桜上水ガーデンズのように、建替え決議を通す前に、何回もヒアリングを重ね、「こんな住まいにしたい」「こんな住環境が欲しい」という希望を、全員から聞き取り調整していく。合意を取りまとめやすいよう、何回もプランを練り直す。

 一般の新築分譲であれば、当然のこととして事業性や経済合理性が重視されるが、建替えマンションの場合は、経済合理性に加えて、住民の希望が強く打ち出されるのである。

 さらには、「誰が住むか分からない」段階で建てられる新築分譲と異なり、施主に当たる区分所有者が施工状況に目を光らせていることも大きい。

 一般にマンションは、「大手のブランドだから安心」「有名ゼネコンが建てるから安心」だと考えられがちだが、施工の質のかなりの部分が、現場ごとの施工体制、プロジェクトチームの違いに左右される。

 関係するスタッフ全員が「質の高いマンションを造ろう」と、一丸となって力を合わせると、本当にいいマンションができやすい。建替えマンションは「施主の顔が見える」ために、そうしたベクトルが働きやすいのだ。

 従前の建物が長くその土地で親しまれてきた集合住宅の場合、旧来の住民プラス、地元の商店街など地域の目が光っている。地元の人は、どんな工事が行われているか注視しており、「これは非常にいい物件だ」と思えば購入する。

 これは建替えマンションに限らないが、地元の住人や開発したデベロッパー、施工したゼネコンの社員が率先して買う物件は、グレードが高いと思って間違いない。そして、人気があって分譲戸数が少ないマンションは、情報が出回る前に完売してしまうから、意外に「人に知られていない」のである。