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政局LIVEアナリティクス 上久保誠人

有利だった日露首脳会談で成果出ず
余裕なき麻生外交が「国益」を損ねる

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第18回】 2009年3月3日
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 麻生太郎首相がサハリンを訪問し日露首脳会談が行われた。日露両首脳は北方領土問題を「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」で解決することで合意した。しかし、実質的な進展はなにもなかったという見方もある。今回は、この日露首脳会談を検証してみたい。日本は本来ロシアに対して強い交渉力を持っているはずだが、今回の首脳会談ではそれを生かせなかった、というのが私の主張である。

石油ブームで高飛車だったロシア

 世界同時不況が起こるまで、ロシアは原油高騰によって、空前の石油ブームに沸いていた。中国・インド・その他の国々の経済発展により石油需要は増加しつづけ、その石油代金を蓄積し外貨準備高は中国、日本に次ぐ世界3位に達していた。

 そして、ロシアは国際社会で高飛車な態度を取っていた。BPなど欧米オイルメジャーをロシアから追い出して自国の資源を独占しようとしたり、グルジアへの軍事侵攻やウクライナへの天然ガス供給停止によって、EU諸国をエネルギー供給不安に陥れた。また、ロシアはルーブルでの石油取引を開始しようとしてドル基軸通貨体制を動揺させた。更に、ロシアは中国と上海協力機構を設立しイラン・インド・パキスタンを準加盟国とするなど欧米への対抗を強めていたのだ。

ロシア経済の弱点を
見通していた英国

 しかし、この高飛車なロシアに対して一歩も引かなったのが英国であった。英露の間には、英国に亡命中の反プーチン派リトビネンコ氏が急死した「リトビネンコ事件」という問題がある。これは、英国が容疑者の引渡しをロシアに要求する一方で、ロシアが英国に亡命中の政治犯の引渡しを要求するという緊迫した事態に発展した。しかし、これに対して英国がロンドン駐在のロシア外交官4人を国外追放にする強硬措置を取ると、ロシアは「常識的な行動を英国に求める」とトーンダウンした。

 なぜ英国はロシアを恐れず、ロシアは英国に報復できなかったのか。それは、英国がロシア経済の弱点を熟知していたからだ。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。

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