サプライヤーの数はなんと1万社。グローバルに生産拠点を展開するホンダのモノ作りを下支えする新クラウドシステムは、ホンダだけでなく、サプライヤーのメリットも考慮した優れものだ。(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

図面を請求しても届くまでに2週間!
ホンダを悩ませていたデータのやり取り

 世界23ヵ国に生産拠点を持ち、サプライヤー1万社と取引のあるホンダ。グローバルにモノ作りを展開するなかで、図面など開発データのスムーズなやり取りが長年の悩みの種だった。

 文字データのみの文書と違い、CADデータは容量が大きいため、通常のファイル送信サービスでは太刀打ちできない。また、新車情報の入った機密書類でもあるから、漏洩しないよう、セキュリティにも気を配る必要がある。

 日本とタイ、米国、欧州は、こうした大容量データの送受信に耐えうる仕組みを、それぞれ独自に構築していた。問題はそれ以外の地域だ。たとえば、サプライヤーにこれから生産する新車の図面データを送る作業ひとつ取ってみても、紙の図面に起こしたり、DVDに入れて送るしか手がなく、複数の人手を介するケースともなれば、なんと2週間もの時間がかかることもあったという。

全世界に散らばるリソース活用の基盤に<br />部品メーカーも巻き込んだホンダのクラウド改革全世界共通で、サプライヤーも含めて使えるデータ通信基盤が整った

 これではあまりに非効率。そこでホンダが取り組んだのが、全世界の自社拠点とサプライヤーを結ぶ、共通したクラウドシステムを構築し、大容量のCADデータをスムーズにやり取りできる環境を整えることだった。詳しくは後述するが、ホスティングだけでなく、大容量データの暗号化と、安定したデータ通信機能を兼ね備えたサービスを採用した。