大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の会長を務める安田隆夫氏の実質的な資産管理会社と親族が、証券会社から15億円あまりの損害賠償訴訟を12月19日に起こされていたことが本誌の取材で明らかになった。

 訴えられたのは、安田会長の実質的な資産管理会社とみられている「セルバンテス」と、社長を務めていた息子の安田純也氏。

 訴状や関係者の話によると、セルバンテスは、資産運用の一任勘定契約を結んでいた投資顧問会社を通じ、証券会社に「日経225オプション取引」の注文を出していた。

 ところが10月初旬に起きた世界同時株安によって、39億円あまりの損失が発生。債務の履行を確保するために差し入れていた証拠金によって一部弁済したものの、15億7900万円については「セルバンテスは破産する」などといって支払いを拒んだという。

 これに慌てた証券会社は、関連会社から緊急の融資を受け立て替え決済を行った。決済できなければ、自身が事業停止に追い込まれるからだ。その立替金がいまだ支払われないばかりか、セルバンテス側が「破産して支払いを逃れようとしている」(関係者)ため提訴に踏み切ったという。

 息子の純也氏についても、現在、社長を退いているものの、辞めた日が損失の確定した10月10日であることから、証券会社側は「損失を発生させた重大な過失がある」としている。

 安田会長は、セルバンテスと人的、資本的に一切関係はないと主張。緊急事態に慌ててドン・キホーテ本社を訪れた証券会社の担当者に対し、「私は素人だから」と述べ、リスクが高いとは知らず、悪いのは投資顧問会社と証券会社だとし支払いを拒んだという。

 しかし証券会社側は、セルバンテスが自己資金以外については安田会長から資金を借り入れるなどしていたことから、「実質的に会長の資産を運用することを目的とした資産運用会社」(証券会社)であり、無関係ではないと主張。

 また、「過去に、株式投資など数百億円規模の投資をしており、リスクについて知らなかったという言い逃れは受け入れがたい」(同)とし、「実質的には安田会長に責任があると考えているようだ」(関係者)という。

 これに対し、安田会長側も反訴は辞さない構えで、両者の主張は今後、法廷の場で展開されることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)