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リーマン・ショックは日本の金融の反転攻勢のきっかけになるか?

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第49回】 2008年10月1日
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 いわゆるリーマン・ショックの後、世界の金融業界の変化と再編がめまぐるしいまでのスピードで動いている。

 大手に関しては米国の独立系の「投資銀行」という業態が消えて、残った有力3社が何れも銀行化の道を選ぶ変わり身を見せた。一方、危機は証券会社から銀行にも向かいつつあり、貯蓄組合最大手のワシントン・ミューチュアルが破綻、地銀大手のワコビアが資産運用など一部の事業を残しシティグループに買収されることで合意したといった動きが米国で報じられているし、英国でも経営不安に陥っている中堅金融機関ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)について、英政府が国有化するというニュースが聞こえてきた。

 これに対して、日本の大手金融機関は、長かった経済停滞の中で不良債権処理を一通り終え、その間、国際金融の舞台に積極的に出て行く余力がなかったこともあって、サブプライム問題の傷が浅い。個々の企業にとって、有力な海外勢が何れもサブプライム問題の損失に苦しんでいる分、金融業界内の地位を向上させるチャンスだといえる。(中堅クラス以下、の金融機関の一部には今後が心配な会社もあるが)

 そう思っていたら、先週前半に、野村證券がリーマン・ブラザーズのアジア・太平洋及び欧州の事業の買収に名乗りを上げ、アジア・太平洋部門については基本合意したようだというニュースと、三菱東京UFJがモルガン・スタンレーに10%から20%、円貨にして最大9000億円の出資を行い筆頭株主になることで基本合意に達したというニュースが、相次いで飛び込んできた。

 その後、野村は両事業の買収で基本合意したことを正式に発表し、一方の三菱東京UFJは週明けの29日に、モルガン・スタンレーの普通株式と転換権付き永久優先株式の取得で総額90億ドル(約9500億円)を出資することで最終合意したと発表した。三菱東京UFJの出資額は邦銀による海外金融機関への投資では最高額で、潜在株式調整後のモルガン・スタンレーへの出資比率は約21%に達し、筆頭株主となる。

 これらニュースを聞いて、筆者の周りでは、複数の金融マンやメディアの記者から、「いよいよ日本勢の反転攻勢ですか!」(証券マン)とか、「日本の金融が、世界の危機に貢献しているということですか」(テレビ局員)といった声を聞いた。そこまで楽観的で勇ましくなくとも、金融の世界では久しぶりの日本勢の積極的なニュースだ、と歓迎したいムードがあるようだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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