経済危機によって、日本企業の利益は極めて低い水準に落ち込んだ。

 ここに日本経済が抱えるすべての問題の根源がある。まず、法人税が激減し、2010年度予算においては税収が歳出の半分にも満たない事態が発生した。このため、国債発行額は空前の規模に膨張した。また、企業利益が回復しないかぎり、雇用情勢が大きく改善されることもないだろう。企業利益が今後どのように推移するかは、文字どおり、日本経済の命運を決することになる。

 したがって、なぜこのような事態に立ち至ったのか、将来の見通しはどうか、事態を改善するには何が必要か、などを検討する必要がある。以下で明らかにするように、利益率低下の大きな原因は、企業の構造にある。

 それにもかかわらず、「デフレから脱却できないから利益率が上がらない」といった議論が、一般に広く行なわれている。これは、利益率低下の原因を企業外の要因に求めるものであり、責任逃れの議論である。こうした風潮が一般的であるかぎり、日本経済にとって最重要の問題が解決されることはないだろう。

製造業の利益は、
景気回復前の3分の1

 ここでは、製造業を検討することとしよう。

 いまさら言うまでもないことであるが、経済危機によって、製造業の利益は激減した。2009年第Ⅰ、第Ⅱ四半期の営業損益は、赤字になった。第Ⅲ四半期に黒字になったものの、水準は極めて低い。利益の指標として経常利益をとっても、同様のことが言える。

 なぜこうなったのだろうか?

 これに対しては、「売上が減少したからだ」という答えが返ってくるだろう。たしかに、経済危機で売上は急減した。その後回復したとはいうものの、四半期売上は90兆円程度にしかなっていない。これは、03~07年にかけて景気が回復する以前の02年頃の水準である(09年第Ⅲ四半期では、それよりやや低い)。したがって、つぎのように言えるだろう。「02年以降輸出が増大し、日本の製造業の売上も増大した。しかし、世界経済危機で輸出が急減し、景気回復前の状態に戻ってしまった」。

 売上に関するかぎりは、たしかにそのとおりである。しかし、日本の製造業が抱える問題は、それにとどまらないのである。

 なぜなら、利益は、売上よりも大きく減少しているからである。【図表1】に見るように、景気回復前(02年頃)と比較すると、売上の減少がほぼ同水準にとどまった一方、利益は3分の1から4分の1にまで激減した(以下、データは、法人企業統計による)。したがって、利益が現在の3~4倍程度に増加しなければ、景気回復以前の状態さえ取り戻せないのだ。製造業の利益に関するかぎり、事態は景気回復前より悪化しているのである。