
製造業人材の資格やスキルの管理を支援するベンチャー、スキルノート(東京都千代田区)が事業を拡大している。企業が抱える人材の資格やスキルを全社で一元管理できるようにし、人材育成や技能継承などを後押ししている。すでにJFEホールディングスや川崎重工業、三菱ケミカルグループ、旭化成といった大手製造業が導入している。信越化学工業出身で創業者の山川隆史代表取締役は「日本発で世界を目指す」と宣言する。山川氏に、創業に至った経緯に加え、スキルノートが秘めるものづくり復興の可能性、今後のグローバル展開などを明かしてもらった。
製造業で人手不足が深刻化
高まるスキル管理の重要性
――スキルノートは製造業の資格やスキルの管理にフォーカスをあてています。製造業の現場での資格やスキルを巡りどのような課題があるのでしょうか。
製造業は日本経済にとって非常に重要な産業ですが、深刻な人手不足に見舞われています。流動化も進んでいて、若手が早期に離職してしまうケースも増えています。加えて、技術者の高齢化による技能の断絶が深刻です。技能継承に関しては、技術者の再雇用などで問題を先送りしてきましたが、いよいよスキルが消えていくフェーズに入ってきました。もちろん、技術の進化にもキャッチアップしていく必要があります。
ところが、そうした課題に対応できてきた企業は限られています。現在、多くの製造業の現場では、資格やスキルをエクセルで管理するのが一般的です。ISO(国際標準化機構)9001の認証を取得するには、技術管理の面では、記録に残さなければいけませんが、紙ベースで保管している企業も多い。さらに、工場や現場単位で管理されていて、全社横断で把握できるようなケースはまれです。
もちろん、製造業の技術や技能は言語化や体系化が難しい面があります。工場や部門ごとに縦割りも発生しやすい。ただし、ここ数年は、多くの企業が危機感を募らせ、従業員のスキルなどを管理する「スキルマネジメント」の重要性を認識するようになってきました。
われわれはそのスキルマネジメントの領域にフォーカスし、企業の従業員の資格やスキルを一元的に管理するシステム「スキルノート」を提供しています。具体的には、工場や部門に所属している従業員一人一人のスキルレベルを可視化できるスキルマップを示します。例えば、溶接などでは、講習などを受けて取得する技能や、国家資格などがありますが、それぞれの技能や資格を現場の誰が保有しているかが分かります。そして、そのデータを使って企業にソリューションも提供しています。
――資格やスキルが一元管理できるとどのようなメリットがあるのでしょうか。