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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

僕らはなぜ、イスラムの戦地を目指すのか?
──死ぬ間際でも、イスラムを意識していた……
【「宗教」を学ぶ:座談会拡大版(2)】

シリアの戦地を踏んだ若者たちが本音でトーク

週刊ダイヤモンド編集部
2014年11月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
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敵への首切りや奴隷制の復活など過激な行為で、世界中でニュースとなっているイスラム教過激派組織「イスラム国」。彼らが勢力を伸ばしているのは、「アラブの春」以降に内政が混乱したシリアとイラクで、現在も米国による空爆など激しい戦闘が続いている。

週刊ダイヤモンドでは、11月15日号(11月9日発売)の第1特集「ビジネスマンの必須教養 『宗教』を学ぶ」で、内戦下のシリアで、戦闘に参加したり、反政府組織に接触した若者たちに座談会を掲載した。ここでは、誌面に収めきれなかった、若者たちの目で見たシリアと反政府組織の“実像”を、3回にわたって紹介。前回に続き、今回は第2弾をお届けする。
(構成/週刊ダイヤモンド編集部 森川 潤)

──イスラム教に改宗されたのはいつですか?

鵜澤 初めは改宗するのはめんどくさいと思ったんで、自由シリア軍に行ったのですが、世俗的な自由シリア軍でさえも、仏教徒じゃ難しいよと言われて、仕方ないからと(改宗しました)。

鈴木 確かに、自由シリア軍にはキリスト教とかはいました。

常岡 自由シリア軍にはアラウィー教徒だろうが、キリスト教徒だろうが受け入れることになっていますね。

鵜澤 (彼らにとって)キリスト教とユダヤ教はまだOKなんですね。(元々が)同じ神様なんで。仏教徒は全然わけわかんないものを信じているからダメって、神道も。

──イスラム教徒には劣るが、自分たちと同じく旧約聖書を聖典のひとつとする「啓典の民」として存在は認めるというものですね。今、イスラム国が奴隷化しているというヤジディ教徒も異教徒なんですかね?

常岡 ヤジディ教は、彼らが崇めている“天使”が、イスラムで言うイブリース、キリスト教ではルシフェールと呼ばれる“悪魔”に当たる存在です。つまり悪魔を神として崇めていて、(イスラム国には)悪魔崇拝者だと言われています。無神論者より悪いという扱いになっていますね。

鵜澤 それだと、徹底的に敵対しますね。

──ちなみに鵜澤さんが参加されていた組織の信仰はどうだったのですか? やはり、信仰より、政権への怒りがあったのですか?

鵜澤佳史(うざわ・よしふみ)/26歳。元戦士。中学卒業後、自衛隊を経て大学に入学。その後農産物販売会社を起業。2013年4月にシリアを訪れ、反政府組織ムハンマド軍のメンバーとして戦闘に参加。現在は会社員。シリアでの経験をまとめた書籍を執筆中。

鵜澤 アサド政権がシリア人の虐殺をしていて、倒さなければいけないというのが根底にありました。原理主義の人たちは、表向きは「シリア国民のために戦っているのではなく、あくまでアッラーのために戦っているんだ」と言うのですが、裏側にはやっぱり同胞を助けたいという気持ちがあるのかなと僕は感じましたね。

常岡 それが一致してるんだと思います。アッラーのために戦うんだけども、アッラーに反する存在としてのアサド政権というものがあって、敬虔なイスラム教徒や他のいろんな民衆が苦しんでいる中で、苦しんでいる人たちを救ってアサド政権と戦うのはアッラーのための戦いになる、という考え方だと思います。 

敵よりも恨まれ
憎まれるのは
金で動く裏切り者

──戦いの中では、「怒り」はモチベーションになっていますか?

鵜澤 あんまり、「怒り」というのは感じなかったですね。彼らはベースに宗教があって、生活の中で怒ることは、あまりよくないこととされてるんですかね。

常岡 チェチェン人と一緒にいた時、彼らは「聖戦士に怒りはない」っていう言い方をしていました。「怒りで戦うのではなくて、アッラーの愛に満たされて戦うのである」と言う人は結構いましたね。

鈴木 それが仕事だみたいな。アッラーの仕事だから、と。

──すると、怒りの連鎖が内戦につながっているわけではない?

鈴木 反政府軍の人たちは、アサド政権は背教者だって言うんですが、特に腹が立つみたいなことを言うわけではなくて、アッラーのためにということを繰り返していますね。

常岡 怒りは、多分、自由シリア軍とかのほうが多いんですかね。

鈴木 自由シリア軍のほうは「革命」という意識が強いと思うんです。

鵜澤    怒りというより、トップ層のほうは割と冷静に物事を見ているイメージでした。

鈴木 自分の家族が亡くなった人も多いですが、それでも特に怒っているっていうよりは、俺が戦うとか、純粋にただ悲しいっていうふうに言っていただけでした。

鵜澤 そうですね。あまり怒りは感じなかったんです。

 実は、戦場では、子どもたちも結構、戦うんですよ。地元の16~19歳ぐらいの子が。肉親が殺されて、その怒りで戦いに来ているのかな、と僕も思っていました。

 子どもたちは部隊の幹部の所に来て、毎晩のように泣きながら懇願するんです。「俺も早く戦わせてくれ」って。ですが、怒りによるものかなって思っていたらそういうわけではなくて、みんな同胞を助けたいみたいな気持ちだと感じました。

 ただ、そういう子どもたちは、部隊から止められてても、あまりにも気持ちが強くなって戦場に行くんですが、経験がないからすぐ死んじゃうんです。

谷川 私は「シャビーハ」に対する怒りとかは結構、話していて感じました。

常岡 シャビーハは、アサド政権のアラウィー教徒で構成する武装集団と言われています。政権による暗殺なんかを昔から仕切ってきたとか言われています。

鈴木 確かに、恨みの対象みたいになっている感じはします。

鵜澤 秘密警察とはちがうんですか、シャビーハって。

常岡 違いますね。

谷川 なんか、政権の小間使いみたいな感じなんですか。

常岡 そんな感じでしょうか。

鈴木 秘密警察が雇ってるっていう感じですよね。なので、余計に裏切り者っていうか、同じ民間人なのに金のために動く、より汚い人たちみたいなイメージです。

鵜澤 裏切り者に対する彼らの憎しみって強いですよね。

常岡 敵よりも裏切り者のほうが厳しいですよね。

鈴木 うん、うん。

鵜澤 そういう意味では、裏切り者に対する憎しみはあるかもしれないですね

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