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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

僕らはなぜ、イスラムの戦地を目指すのか?
──テロリストとは違った過激派の表情
【「宗教」を学ぶ:座談会拡大版 (1)】

シリアの戦地を踏んだ若者たちが本音でトーク

週刊ダイヤモンド編集部
2014年11月12日
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敵への首切りや奴隷制の復活など過激な行為で、世界中でニュースとなっているイスラム教過激派組織「イスラム国」。彼らが勢力を伸ばしているのは、「アラブの春」以降に内政が混乱したシリアとイラクで、現在も米国による空爆など激しい戦闘が続いている。

週刊ダイヤモンドでは、11月15日号の第1特集「ビジネスマンの必須教養 『宗教』を学ぶ」で、内戦下のシリアで、戦闘に参加したり、反政府組織に接触した若者たちに座談会を掲載した。ここでは、誌面に収めきれなかった、若者たちの目で見たシリアと反政府組織の“実像”を、3回にわたって紹介する。
(構成/週刊ダイヤモンド編集部 森川 潤)

──本日は、ジャーナリストの常岡浩介さんの協力の下、現在内戦下にあるシリアで反政府組織に参加されたり、接触された若い方々に集まってもらいました。

常岡浩介 僕は1998年から取材活動をしているフリーの記者です。シリアは平和な時代から含めると92年以来10回以上、行ったり来たりしていて、平和な時代は本当にいい所でした。

 アラブ社会の中でも一番多様性のある所で、例えば少数宗派であるアラウィー(イスラム教から派生した宗教で、輪廻転生を取り入れるなど異端とされる)とか、少数民族のクルド人、アルメニア人、他にも、イスラム教のスンニ派のゴリゴリの人もいれば、世俗的な人もいたり、共産主義者もいるという、すごく多様性のある社会で、その多様性が面白かったんですよね。

 とにかく、どこへ行ってもみんなとんでもなく親切で、泊めてくれたり、飯をおごってくれたり。そういうところは、どの宗派だろうがどの社会主義者だろうが共通していまして、行った人はみんなシリアが好きになるんですよね。

常岡浩介(つねおか・こうすけ)/45歳。早大卒。長崎放送記者を経て1998年フリー記者。チェチェンなどで戦争取材を続け、ロシアなどで政府系組織に誘拐された経験も。シリア内戦ではイスラム国にも接触。
今年9月シリアを訪れた常岡氏(左上)、イスラム国が攻略したアサド政権空軍基地に横たわる戦闘機の残骸(右上)、アサド政権が支配するアレッポの空軍基地を、イスラム国エジプト部隊が迫撃砲で攻撃(左下、右下)

 それが3年前に今の内戦になってしまって……。僕はアラビア語が全然わからないものですから(入国を)諦めていたら、チェチェン人の友達が連絡をくれて、シリア内にいるチェチェン人を紹介してくれたもので、行くはめになりました(笑)。誰かが誰かを紹介してくれて、信頼を得て、また次にも行けるようになる社会でもあるんですよね。それで「イスラム国」にも行けるようになってしまって3回行きました。

 さらに、ニュースにもなったイスラム国行きを志願して逮捕された北海道大学の学生に紹介されていたものですから、彼のインタビューまで取っていまして、結果、(私戦予備罪で公安警察に)自分も家宅捜索まで受けて、参考人、つまり当事者になってしまいました(笑)。 

ロマンチックに
夕食に誘う
シリアの痴漢

谷川ひとみ 私は27歳で、大学院で(旧ソ連の)北コーカサスの歴史を勉強しています。私もシリアは6年前に行ったことがあって、その時が初めてだったんですが、確かにすごく親切で私もすごく好きになって、当時は治安もよかったですし、安いし、気持ち良かったです。痴漢以外は……(笑)。

常岡 エジプトの痴漢とかものすごく有名だけど、シリアでもやっぱりいるんだ。

谷川 シリアもイランもヨルダンも。ヨルダンよりはまだマシかな。

常岡 へぇ。

谷川 民族色があるんですよね、やり方に。ヨルダン人はいきなり触ってくる人がいたりするんですが、シリア人は夕飯に誘ってくれて、「噴水があってきれいだよ」って言ってくれたり……(笑)。「とってもロマンチックな場所だから」と。他の場所と比べると、シリアはちょっとマシな人たち(笑)。

鵜澤佳史 でも、いわゆるイスラム原理主義の人たちは全然違うんですよ。サラフィー主義(イスラム教スンニ派の中で厳格な復古主義を主張、7世紀の生活を守ろうとする。シリアでは、サラフィー・ジハード主義という過激派になる者も多い)の組織は、女性が歩いて来ても「見るな」みたいな。

──そうなんですか。

鵜澤 友達の家に行っても奥さんは絶対に出てこないし、奥に入ったままだったり、一切、女性との会話はなかったです。

鈴木美優 私もサラフィー主義の人に会いましたけど、私は女性なので(周りに男性が)いなくなるまで見ててくれるんですよね。

常岡 男はね、サラフィーのあの世界に行くと、女性にインタビューするどころか、まったく姿も見られないという感じになりますね。

鵜澤 映像でもダメですしね。絵本とかでもだめなんです。女性を隠しちゃって。

──ああ、そこまで。

鵜澤 徹底している。

常岡 現地に入った人でも、男性と女性では、見ている世界が全然違ったりしますね。 

鈴木 テレビを見る時間とかも分かれてるんです。

谷川 え、そんなに!

鈴木 夜8時からは女性がこの部屋に入ってテレビを見る、みたいに。その間、男性は一切立ち入り禁止です。

常岡 レストランとかどうですか。自分が行ったときは、女性が全然いなかったんですけど。

鈴木 まず、行かない……。

常岡 そういう所、行かないんだ。谷川さんは「ニカブ(イスラム教の女性が着用するベールで、目以外の顔と髪をすっぽり覆う)大嫌い」って、捨てて帰ったでしょ。

谷川 はい、シリアを出国した後に取って、ゴミ箱にバンっと捨ててバイバイと(笑)。

常岡 鈴木さんはニカブ、適応してたんですか。

鈴木 私はトルコにいた時はずっとしてました。トルコで、会う人がヌスラ戦線(シリア内戦で、2012年ごろ台頭したサラフィーの過激派。アルカイダからの支援が判明)とかイスラム系の人たちだったので。必ず着けて来てくれって。

常岡 ああ、そうですね。

鈴木 そうでないと、他の周りの人が見たときに「未婚の男女がカフェで会ってるぞ」ってなる、と言われました。

 しかも、女性はニカブ着てないと「あれはどういう関係なんだ」と指摘されちゃうんのですが、その割には、コーヒーとかご飯とか誘ってくるんで……、どうすればいいんだろうと(笑)。私はとりあえず、一番隅っこの席で、壁を向くように座って、そこで初めてニカブを取って、顔を出していいよっていうサインが出たら、パッて外したことがありました。

常岡 (ニカブを)やっていて辛いとかはあった?

鈴木 歩いてても最初はやっぱり暑いし、話す時は自分の顔を出したいなというのはありました。

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