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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

僕らはなぜ、イスラムの戦地を目指すのか?
──戦場に来ているのは“落ちこぼれ”じゃない
【「宗教」を学ぶ:座談会拡大版(3)】

シリアの戦地を踏んだ若者たちが本音でトーク

週刊ダイヤモンド編集部
2014年11月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
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敵への首切りや奴隷制の復活など過激な行為で、世界中でニュースとなっているイスラム教過激派組織「イスラム国」。彼らが勢力を伸ばしているのは、「アラブの春」以降に内政が混乱したシリアとイラクで、現在も米国による空爆など激しい戦闘が続いている。

週刊ダイヤモンドでは、11月15日号の第1特集「ビジネスマンの必須教養 『宗教』を学ぶ」で、内戦下のシリアで、戦闘に参加したり、反政府組織に接触した若者たちに座談会を掲載した。ここでは、誌面に収めきれなかった、若者たちの目で見たシリアと反政府組織の“実像”を3回にわたって紹介。第1弾第2弾に続いて今回は3弾目をお届けする。
(構成/週刊ダイヤモンド編集部 森川 潤)

──鈴木さんは、実際に戦地に行かれて、印象はどうでしたか?

鈴木美優(すずき・みゆ)/24歳。ジャーナリスト。横浜市立大学在学中の2013年9月、シリア北部の村を取材し、自由シリア軍やヌスラ戦線にインタビュー。14年3〜7月、シリア国境に面するトルコの都市に滞在。

鈴木 私はバンバン撃ち合っているところを見たわけではないんですが、今年5月に訪れたハマの北部の方が、アサド軍から塩素ガス攻撃を受けた後の場所で町が崩壊していました。

 病院では医者が全滅して、医者も患者として他の病院に運ばれるという事態になっていて、私が行った日の深夜には、さらにアサド軍の攻撃を受けました。基本的に夜のみんなが寝ている時間に、普通の何もない村の病院や学校、モスクなど人の集まる場所を狙うことが多いですよね

──塩素ガスで崩壊した町というのが想像できないんですが。

鈴木 ただ、黒い。匂いも初めて嗅ぐ匂いでした。

 白内障というか、眼球が白くなったような被害者もいて、4歳5歳の子どもが重症を負ってトルコに運ばれている間に命を亡くすケースもありました。

鵜澤 塩素ガスはいやですね。

──アサド軍にはどの国が武器を供給しているんですか?

常岡 ロシアとイランです。現場に行った人はみんなアサド政権を問題にするんですけれど、外にいると、イスラム国だけを問題にしてしまう構図がありますよね。日本にはなぜか、アサド政権を支持する人までがたくさんいる……。

鵜澤 今の虐殺映像は全部デマとか、プロパガンダだとか。

鈴木 アサド派はみんなそう言いますね。

常岡 (アサド政権による)化学兵器が発覚した時に、あれは誤ってぶちまけてしまったものであるという見解を話した方も。

鵜澤 ファンタジーですね(笑)。

──世の中には陰謀論がはびこりやすいです。

常岡 日本のメディアが弱いんではないでしょうか。中東も陰謀論が多いんですけど、それは情報がちゃんと公開されていないからっていうのが大きいですね。

谷川 留学している時、アラブ人の大学の先生がたくさん来て講義してましたけれど、彼らも陰謀論ばっかりなんですよね。インテリっていう人たちまでも。それはさすがにびっくりしました。

イラク戦争直前の
フセイン政権に似た
イスラム国の体制

──この中で、イスラム国と接触されたのは常岡さんだけですね。

常岡浩介(つねおか・こうすけ)/45歳。早大卒。長崎放送記者を経て1998年フリー記者。チェチェンなどで戦争取材を続け、ロシアなどで政府系組織に誘拐された経験も。シリア内戦ではイスラム国にも接触。
今年9月シリアを訪れた常岡氏(左上)、イスラム国が攻略したアサド政権空軍基地に横たわる戦闘機の残骸(右上)、アサド政権が支配するアレッポの空軍基地を、イスラム国エジプト部隊が迫撃砲で攻撃(左下、右下)

常岡 3回行っています。もともと「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」が「イスラム国」を名乗りだしたのは6月末ですね。突然、(指導者の)アブバクル・バグダディが「カリフ(ムハンマドの後継者で、イスラムの最高権力者)」を名乗り、「今日からイスラム国である」と言ったわけです。

 それまで、シリア側で活動するISISだった時は、バグダディの直接の影響もほとんどなく、他のグループとあまり差はありませんでした。その時点でも一番残酷だと言われていましたが。

 3回目に行った時に分かったのは、支配領域の民衆にインターネットも使わせなかったり、プロバイダや携帯電話も全部禁止にしたりしていることでした。理由は、スパイ利用されるから。結局、命令系統は無線しかないのですが、命令は上から下には行くけれども、下から上へのフィードバックが全然行かなくなっている。

 そういう体制って、心当たりがあるんですよ。2003年に行ったサダム・フセイン政権におけるバグダッドがまさにそうでした。イラク戦争直前のフセイン政権で、バース党が秘密警察にずっと支配されていた時代のことですね。

 イスラム国のバグダディも(イラクに)米軍が来た時に出現した抵抗運動の主導者の一人だったようですが、元から首切り作戦ばかりやってるような人のようです。

 今、イスラム国の幹部になっているのは、バース党の元幹部だそうで、要は、サダム・フセインの政権の残党です。そうなると、イスラム国の中身は、サラフィー(イスラム教の厳格な復古主義を主張し、7世紀のカリフ時代を理想とする。一部が過激派に)ですらないのではないか、と感じます。

 今、バース党の残党でやっているのはナクシュバンディ軍だと思われますが、彼らはサラフィーと敵対関係にあるスーフィー(イスラム教の神秘家)なんです。そうなると、事態がちょっとおかしくみえる。つまり、イスラム国にとってサラフィーの理念はあくまで後付けであって、カリフ制再興がサラフィーの中で高まっているのを、あくまで利用しているだけじゃないかと、僕は考えます。

鵜澤 ちゃんとした人たちは利用されていると知っている?

常岡 はい、そう思います。

 僕は、イスラム国の中に知り合いがいて、エジプト人で、ムバラク政権に何十年も抵抗を続けてきて服役して、刑務所で拷問を受けたりしてきたような人です。

 前回会いに行った時に、彼に打ち明けられたのが、仲間がバグダディに対するバイア(忠誠)を取り消すべきだと表立って発言したところ、すぐに捕まえられて処刑された、と。その後、何日も食事ができないぐらい悩み、「今のイスラム国はまともではない」という言い方をしていました。

 シリアの反政府組織は、外国人が所属するのは「イスラム国」、シリア人は「ヌスラ戦線」という風に、入る組織が分かれていたりするのですが、ずっとシリアの内戦を戦っていた人たちの中には、「今の状況はかなりとんでもない」と考えている人が増えています。暴力は内側に向かっていますんで。

 英紙が書いていましたが、イギリス人で帰国を希望している人に対して、処刑の危機が迫っているという内容がありました。内部の裏切り者を恐怖で締め付ける方向に行っていますよね。

鵜澤 それ、シリアも同じですか。

常岡 シリア内でのことです。

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