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嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え
【第20回】 2014年11月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
岸見一郎 [哲学者]

オタクこそ
これからの日本の希望である!
小林啓一✕岸見一郎 対談【後編】

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アドラー心理学の入門書として51万部のベストセラーを記録した『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎氏と、話題の青春オタク映画『ぼんとリンちゃん』の監督小林啓一氏による対談の後編です。作品だけでなく、映画監督としての姿勢にまで『嫌われる勇気』と共通点があるとする小林監督。オタク論からクリエイターの他者貢献にまでわたる二人の対談をお楽しみください!

オタクは日本の希望である

岸見一郎(以下、岸見) これは最初にお聞きする話だったかもしれませんが、なぜ小林監督はオタクをテーマにした映画を撮ろうと思われたのですか。

小林啓一(以下、小林) 本当によくよく考えてみると、前回岸見先生がおっしゃった「羨ましい」っていうのが原点だったように思います。何やらエネルギッシュで周りのこととかあまり考えず、自分の好きなことを突き詰めている姿が、すごく力強いものに感じられたんです。で、大げさな言い方かもしれませんけど、それって日本人が忘れかけているもののような気がして。そういう部分を肯定的に撮れればいいなと。

岸見一郎(きしみ いちろう)
哲学者。1956年京都生まれ。京都在住。高校生の頃から哲学を志し、大学進学後は先生の自宅にたびたび押しかけては議論をふっかける。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの“青年”のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアルフレッド・アドラーの『個人心理学講義』(アルテ)、『人はなぜ神経症になるのか』(春秋社)、著書に『嫌われる勇気』(古賀史健氏との共著、ダイヤモンド社)、『アドラー心理学入門』『アドラー心理学実践入門』(以上、ベストセラーズ)』、『アドラー 人生を生き抜く心理学』(日本放送出版協会)などがある。

岸見 なるほど。

小林 あとは、オタクの持っているジョークのセンスに惹かれましたね。自虐的に自分や仲間のことを面白い言葉で表すんですよ。映画のなかでもぼんちゃんの親友の呼び名は「肉便器ちゃん」ですから(笑)。ネット上での罵り合いも興味深いです。そこにはちょっと愛情がある。たとえば2ちゃんねるの住人が「彼女が◯◯で悩んでるんだよね」といった発言をすると、次の人が「でも、彼女いないよね」と返す(笑)。で「キター!」みたいな。これは自虐的ではないですけど、ネガティブなようで、わりと笑いにちゃんと持っていってるわけです。

岸見 カウンセラーの立場として言うと、深刻に悩んでいる人がカウンセリングに来られるのですが、その深刻さをいかに落としていくかが我々の仕事。だから、深刻な悩みを抱えてきた人が笑うというのはすごいことです。自分の生き方を少し距離をおいて余裕を持って見られるようになると笑えるわけです。それはカウンセリングの進捗に従って少しずつ出てくる。「今日はあの人、笑ったな」というのが回復の兆候なのです。

小林 そうなんですか。

岸見 私も『ぼんとリンちゃん』を観てオタクの人たちのユーモアのセンスに学びたいと思いました。ぼんちゃんは、そういう意味でもすごいですよね。リンちゃんとのやり取りを聞いていると、「あぁ、あんなふうに話をすれば深刻さを落とせるんだ」と勉強になりました(笑)。自分を客観視できているということかもしれません。

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岸見一郎[哲学者]

きしみ・いちろう/1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの“青年”のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。


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フロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨頭とされながら、日本では無名に近いアルフレッド・アドラー。彼はトラウマの存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善する具体策を示してくれます。まさに村社会的空気のなかで対人関係に悩む日本人にこそ必要な思想と言えるでしょう。本連載では、アドラーの教えのポイントを逐次解説することでわかりやすく伝えます。

「嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え」

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