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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「防衛本能の原点」に立ち返れ!
サイバーセキュリティの基本は「身を守るおしえ」にあり

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第6回】 2014年12月1日
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 サイバーセキュリティには、ITや数学などの高度な専門知識のほか、心理学や法学なども絡んできます。担当者がそれらを学んでようやく理解した頃になると異動になってしまい、また新しい担当者が一から始める。これでは国際会議に参加しても深い議論や交渉はできません。他国の担当者からすれば「どうせ、すぐ次の人に変わるだろう」「またそこから説明しなければいけないのか?」となり、いずれ相手にされなくなるでしょう。

 もちろん、日本の担当者だって一所懸命がんばっているのですからバッシングするつもりはありません。しかし、前述したようにサイバーセキュリティは「国内だけで対策を講じるのは無理」という前提に立って考えるべきなのです。

世界最強のセキュリティ国家エストニア
プログラミングを習うのは小学1年生から

 今年、この国際会議の議長を務めるのは、サイバーセキュリティの分野で国際的なイニシアティブを発揮しているエストニアのイルヴェス大統領でした。じつは、エストニアは世界で最もサイバーセキュリティが進んでいる国で、彼自身もITとサイバーセキュリティの専門家です。

 エストニアは1991年に旧ソ連から独立後、資源も産業も乏しいことから、行政・社会面のITを通じた効率化とIT産業の育成を積極的に進める「IT立国」を目指しました。日本ではコンピュータプログラミングを習うのは大学からというのが一般的ですが、エストニアでは小学1年生から習い始めます。

 その結果、今では行政も各機関のデータベースが相互にリンクされ、会社設立や確定申告、選挙投票、個人情報の閲覧などがネット上で簡単にできるようになっています。たとえば、会社の登記はオンラインで申告したら15分程度で済むとか。あの「スカイプ」を生み出したのもこの国です。

 しかし、IT化はセキュリティのリスクと隣り合わせです。実際、エストニアは2007年に世界で初めて大規模なサイバー攻撃を受け、数時間にわたってインターネットが寸断されるという大事件を経験しました。

 想定外の最悪の事態に陥ったはずなのですが、逆にその時の立ち直りの早さが高く評価され、エストニアはNATOの研究施設、サイバーディフェンスセンターの本拠地となりました。イルヴェス大統領もサイバーセキュリティを推奨する指導者として世界的に名を馳せたのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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