旧システムの度重なるトラブルで顧客を失う事態に

東京薬品は、ジェネリック医薬品の流通を専門に手掛ける商社だ。医療機関や調剤薬局に必要な医薬品を安定して届けることを使命に、取扱商品と取引先を広げてきた。年商は100億円規模に達し、ジェネリック医薬品専門商社として国内3位の地位を確立している。

「当社は1993年に創業し、中央医科グループの関連会社として大きなビジネスができる体制を整えてきました。メーカーの品ぞろえについては、国内でも最大級のラインアップを持つ会社だと自負しています」

そう語るのは、東京薬品渉外部部長の那倉勝夫氏だ。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナー東京薬品
渉外部 部長
那倉勝夫

しかし、その使命を実務で支えるはずの基幹システムが、ある時期から大きな経営課題となる。注文量や商品データ量の増大に対応し切れず、オペレーションのボトルネックとなっていたのだ。当時、業務課の現場責任者として出荷業務に向き合っていた流通部次長の竹下竜太郎氏はこう振り返る。

「旧システムは、特に医薬品EDI(電子的な受発注・流通システム)や出荷指示の部分でトラブルが頻発していました。データ量が増えるほど処理に時間がかかり、エラーではじかれてしまう。出荷指示を5分割して処理せざるを得ないこともありました。業務に深刻な支障が出て、深夜に出勤したこともあります。医薬品という生命に関わる商品が必要なときに届かないことは、顧客の信頼失墜に直結します。実際に取引先をなくしたこともありました」

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナー東京薬品
流通部 次長
竹下竜太郎

こうした問題が起きた背景には、旧システムを構築したシステム会社が医薬品業界でのシステム構築経験がゼロで、要件定義が不十分だったことがある。増大する販売量への対応も見誤っていた。

課題は処理速度だけではなかった。データを抽出しても、帳票作成や分析しやすい形への加工はExcelによる手作業で行わなければならず、帳票フォーマットの作成・変更に1日数時間を費やすこともあった。また、倉庫での商品ピッキングも、伝票を見ながら人の目と手で行っていたが、同じ商品でもロットや有効期限が異なる医薬品では、製造番号の取り違えが大きな問題につながりかねない。正確性と安定性が求められる医薬品専門商社として、見過ごせないリスクだった。

コストパフォーマンスと現場の使いやすさが決め手

旧システムの限界がビジネスに深刻な影響を及ぼす中、東京薬品は新たな基幹システムの検討に入った。2019年、「新基幹システムプロジェクト」を立ち上げ、那倉氏がプロジェクトマネージャーに就任。竹下氏と、当時業務課に所属していた事業戦略部情報システム課課長の坂口健太氏もメンバーとして参画し、複数社によるコンペを進めていった。

新システムに求めたものは、大きく二つあった。増大するデータ量や取引量に安定して対応できる処理パフォーマンス。そして、ハンディーターミナル(携帯端末)を活用して倉庫現場の作業効率と出荷精度を高める仕組みである。

コンペにはアイルの他、長年にわたり取引関係のあったシステム会社も参加したが、東京薬品が最終的に選んだのは、アイルの販売・在庫管理システム「アラジンオフィス」だった。決め手となったのは、コストパフォーマンスと現場の使いやすさである。

「競合会社のシステムは、間違いを極力なくすことに重きを置いていました。医薬品を扱う上で、それはもちろん重要です。ただ、当時の当社にとって最も大きな課題は生産性の向上でした。アイルさんであれば、正確性を踏まえた上で現場が使いやすいシステムを作れるという確信が持てました」(那倉氏)

竹下氏が注目したのは、「アラジンデザイナー」という機能だ。データ出力する項目をユーザー自身が自由に設定し、帳票作成ができるツールで、従来はシステム会社に依頼していた集計表や帳票を、現場側で柔軟に調整できる。

「ユーザー側で使いやすいように調整できるという考え方に魅力を感じました。自分たちで帳票を変えたり、必要な項目を作れたりするなら、現場主導で改善を進められる。そこが大きな決め手でした」(竹下氏)

アイルのシステムソリューション営業の風間翔平氏は、「アラジンデザイナーは、アラジンオフィスに標準で装備している機能です。分析したい項目や帳票の内容がお客さまごとに異なるケースも多いため、お客さまご自身で自由に帳票を設計できるこの仕組みが、各社さまに最適な形でシステムをご活用いただけることにもつながっています」と説明する。

現場のニーズを熟知したアイルならではの機能だ。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナーアイル
システムソリューション営業
風間翔平

導入プロセスで東京薬品が旧システムとの違いとして感じたのが、医薬品業界への理解だった。医薬品卸の業務には、薬価、ロット、有効期限、EDI連携、得意先ごとの納品ルールなど、業界特有の言葉や取引慣行が多い。アイルは医薬品業界での導入経験を豊富に持っており、前提を共有した上で話を進めることができた。

「こちらが要件定義で『薬価』などの専門用語を使っても、アイルさんには業界知識があるのでスムーズでした。EDI連携についても他社事例をご存じなので、非常に話が早かったです」と那倉氏はアイルの専門性を評価する。

一方で、ハンディーターミナルを活用したピッキングシステムの設計は、両社にとって新たな挑戦だった。東京薬品の物量は多く、10〜20人のスタッフが同時に無線通信を行う。実装を担ったアイルのシステムソリューションサポートの宝力聡氏にとっても、処理速度と正確性を両立させる難度の高い案件だった。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナーアイル
システムソリューションサポート
宝力 聡

「ハンディーターミナルで読み取って確定した瞬間に、アラジンオフィスに売り上げデータができる仕組みだったため、処理が複雑になりました。大量のデータが集中してもスムーズに動くように、何度もチューニングを重ねました」と宝力氏は安定稼働に向けた対応を語る。

旧システムで顧客に迷惑を掛けた経験があったからこそ、東京薬品は稼働時の安定性にこだわった。アイルも並行稼働や受け入れテストを重視し、21年3月、大きなトラブルなく新システムの稼働が始まった。

出荷処理時間を劇的に短縮。現場から「人生が変わった」という声も

アラジンオフィス導入後、最も劇的な変化を遂げたのは一括出荷処理のスピードだ。注文に対してロットを割り当てる作業が大幅に短縮され、出荷業務の待ち時間は大きく減った。

「以前はただ画面を眺めて待つほかなかった1時間以上の待機時間が、導入後はわずか5分で処理が終わります。注文量は以前の倍になっていますが、それでも短時間で処理できています」と坂口氏は話す。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナー東京薬品
事業戦略部 情報システム課 課長
坂口健太

「今は誰でも伝票を出せるようになり、属人化も解消されています。以前は長時間かかる出荷処理業務のために遅番のシフトを組んでいましたが、それが不要になったことは非常に大きいですね。社員からは『人生が変わった』と言われたほどです」と那倉氏は語る。

ハンディーターミナルの活用は、従来起こっていたピッキングミスの防止につながっている。誤ったロットや有効期限の古い商品を出さないためのチェックが働き、出荷精度も高まった。

「医薬品は製造番号や有効期限が決まっています。間違えて届けてしまうと大きな問題になります。ハンディーターミナル導入後はミスが激減し、安定供給の面で大きな効果がありました」と竹下氏は手応えを語る。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナーハンディーターミナル導入でミスが激減しただけでなく社員の負担も軽くなった

東京薬品の売上高は、かつて50億円規模で伸び悩んでいた時期があった。「以前のシステムでは、現在の売り上げ規模まで伸ばすことはできなかったと思います。アラジンオフィスのおかげで、売り上げが伸びる基盤が整いました」と那倉氏は導入効果を実感する。

新倉庫移転で安定供給体制をさらに強化

BCP(事業継続計画)対策の面でも効果があった。東京薬品の本社所在地はハザードマップ上、浸水リスクが高いエリアにある。以前は自社内にサーバー室を設けて運用していたが、アラジンオフィス導入に合わせてデータをクラウド環境へ移管した。

「災害時でもリモートで操作でき、流通を止めない手段を持てたことは非常に大きいです」と那倉氏は言う。

導入後のアイルのサポート体制についても、東京薬品の評価は高い。現在、アイルとのやりとりを担う坂口氏はこう話す。

「ユーザー用ポータルサイトの『アイルナビ』に問い合わせると、その日のうちに回答が来ます。レスポンスの早さや正確性が非常にありがたい。システム以外の面でも、『この件はこの窓口に相談するといいですよ』といった的確なアドバイスを頂けるので、本当に助かっています」

アイルにとっても、東京薬品は信頼できるパートナーとなっている。

「『これをやりたい』というご要望に加えて、『これをやろうとすると、アラジンオフィスの仕組みとして、こういう項目の追加が必要になると思うのですがどうでしょうか』と、システムの仕組みを踏まえた上で相談していただけます。同じ観点でお話しできるので、当社も提案がしやすいです」と宝力氏。

東京薬品は現在、新倉庫への移転を計画している。面積は現行の3倍、容積は6倍になる見込みだ。30年度に150億円、35年度に200億円という売り上げ目標を掲げ、物流体制の強化を進める。今後は、フリーロケーション機能の検討や、得意先ごとにある納品形式の要望への対応も重要になる。さらに、本業に加え、他社の荷物を預かる倉庫事業への参入も視野に入れている。

「新倉庫や次の課題についてもご相談を頂いています。インフラ、セキュリティー、AI活用など、システム業界の進化も踏まえながら、新しい技術をご提案し、一緒に成長していきたいと考えています」と風間氏は語る。

東京薬品は板橋区との連携の下、非常時にも区内の医療機関へ医薬品を安定的に届ける役割を担おうとしている。那倉氏は、同社が目指す姿を「地域医療の最後のとりで」と表現する。

システム刷新で出荷処理時間が1時間超から5分に短縮。医薬品の安定供給を支える、現場を熟知したパートナー「アラジンオフィス」は東京薬品の成長に不可欠な存在となっている

「非常時でも薬を供給できるプラットフォーム企業になりたい。そのためにも、アイルさんのシステムは不可欠な存在です」

「愛し愛され信頼される企業」という同社の理念は、掲げるだけでは実現しない。日々の流通を支える仕組みを磨き続けることが、信頼につながる。「アラジンオフィス」は、東京薬品の成長と、医薬品を安定して届ける使命を実現する基盤として、同社を支え続けていく。

●問い合わせ先
株式会社 アイル
〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー15~17・20階
TEL:0120-356-932
https://ill.co.jp/
アラジンオフィス:https://aladdin-office.com/