一般消費者にはほとんど知られていないが、不動産業界には「物件の囲い込み」という問題が広くはびこっている。消費者の利益を毀損しかねない行為であるにもかかわらず、長年に渡り、業界も行政も効果的な対応はほとんど行っていない。その実態について、ネクストの井上高志社長に聞いた。
――物件の囲い込みとは、どういうものなのでしょうか。
文字通り、不動産会社が手にした物件の情報を、他社に渡さず、抱え込んでしまうことです。
例えば、不動産会社A社が、売主から物件売却の仲介を依頼されたとします。一方で、不動産会社B社には、その物件を買いたいという顧客がいたとします。
そこでB社はA社に連絡し、物件を買いたい客がいると伝えます。ところがA社は「すでに売れてしまった」などと偽って、物件を渡さないのです。A社の狙いは、自社が抱える売主と買主をマッチングさせる「両手取引」を行い、双方から手数料を稼ぐことにあるのです。
結局、割を食うのは、A社に売却仲介を依頼した顧客です。B社が抱える顧客に対して高く売れたはずなのに、A社が抱える買い手に売ったことでより安い金額しか手にすることができないということも起きるのです。
大半の顧客は、まさか不動産会社が裏でそんなことをしているとは知る由もありません。会社によっては、他社に紹介して片手取引となってしまうと社内で始末書を書かされるところもあると聞きます。どれほど顧客を軽視しているのかと呆れるばかりです。