大義なき選挙と批判される今回の解散総選挙。『週刊ダイヤモンド』の人気政治コラム「永田町ライヴ!」の後藤謙次氏が、12月13日号特集「選挙の経済学」のために書き下ろした特別版で、今回の解散総選挙の真の狙いに迫る。


「平地に乱を起こす」という言葉そのままの第47回衆議院選挙が2日に公示された。首相の安倍晋三が衆院の解散を明言したのが11月18日。しかも前回衆院選からまだ2年。全てが異例といっていい。誰もが想定しなかった意表を突いた師走選挙に込められた安倍の狙いは何か。その中にこそ安倍が目指す政権戦略の核心がある。

 安倍は解散権を行使する理由について税率10%への消費税増税の実施時期を法律で定められた2015年10月から1年半先送りすることを挙げた。

「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聴かなければならないと考えた」

 12年8月の民主、自民、公明の3党合意による「社会保障と税の一体改革」の根幹部分を変更するには、国民有権者のお墨付きが必要というわけだ。

 だが、消費税法には景気弾力条項があり、政府の判断で法改正すれば先送りできるため、わざわざ国民に信を問う必要はない。

 ましてや自民、公明の与党は衆参両院で圧倒的な議席を有しており、なおさらのことだ。つまり安倍の本当の目的は消費増税の先送りにあるのではなく、解散権の行使そのものにあったとみるべきなのだ。

 現に衆院が解散された直後だったが、安倍は周辺に解散権を行使した本音の一端を明かしている。

「消費増税を18カ月(1年半)先送りするのは大変なことだ。財務省や自民党税調は命懸けで増税すると言っていた。これをつぶすには解散しかなかった。解散をしなかったら大政変になっていた」